平野美宇が全日本卓球で優勝。「女子16歳トリオ」の明暗を分けたもの (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by YOSHIMURA Kanami /PHOTO KISHIMOTO


「考え方を切り替えることができなかった」

 松﨑コーチは、そう言った。第2ゲーム、相手が対応してきて、やりづらさが増した伊藤は早く第2ゲームを取りたいという意識が働いた。だからこそ、対策がハマってほぼパーフェクトだった第1ゲームのやり方に固執したのだろう。

 しかし、それが足かせになってしまった。相手の変化に柔軟に対応することができず、攻め急ぎ、ミスを招いた。第2ゲーム、5-2でのシーンはこの試合の趨勢を決めるポイントとなった。チャンスボールを回り込みフォアで強く打ちこんだが、ミスになったのだ。

「ここで1点取っていれば6-2で4点差がついたし、余裕を持てたんですけど、5-3になり、どっちに転ぶか分からない展開になった。その後は余裕がなくなってミスが続いた。どう対応するのか、話はしていたんですが、プレーで相手を上回ることができなかった」

 松﨑コーチは悔しそうに振り返った。いつもは落ち着いて、相手の変化にも対応できるのだが、できなかった。伊藤がいつもと違ったのは「優勝したい」という気持ちが強すぎて、先走ってしまったからだろう。対策も準決勝、決勝で対戦する石川や平野について時間を割いていた。「気持ち的には上を見ても、実際は対戦する選手の対策をしっかりやればよかった」と伊藤は悔やんだが、本来は目の前の試合に集中していくタイプ。先を見過ぎたこと自体、平常心ではなかったということだ。

「ほとんどいいところなく負けてしまった。悔しいというか、もったいない......」

 日本のトップを走る平野を今度は追いかける立場になった。この敗戦を糧にして、伊藤はどのように奮起した姿を見せてくれるだろうか。

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