【NFL】レイブンズがスーパーボウル制覇。勝敗を分けた「残り5ヤード」 (2ページ目)

  • 永塚和志●文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

 第4クォーター、残り5ヤード――。危機的状況で49ersに最後まで得点を許さなかったのは、まさしくレイブンズの今季を象徴する場面であろう。このときの状況を、試合後のルイスはこう述べた。

「自分たちのやってきたことを信じて仕事をやり遂げれば、相手は(エンドゾーンに)入って来られないと分かっていた。あれは、俺のキャリアの中でも、最高のゴール前ディフェンスだったよ」

 今季はレギュラーシーズン半ばに上腕三頭筋を断裂。最終節で復帰するものの、37歳になったルイスは選手として、往年のパワーもスピードも失っていた。だが、ルイスはチームにいるだけで、周囲に絶大な影響を与える稀有(けう)な存在だったのである。

 レイブンズのQBジョー・フラッコも、その影響を大きく受けているひとりだ。レギュラーシーズンのフラッコは不安定なプレイを繰り返し、失敗を恐れるがあまりに萎縮する場面も多かった。しかしポストシーズンのフラッコは、まるで別人のように安定感を増し、大胆なプレイも見せるようになった。その結果、プレイオフ4試合でのパスタッチダウン数は、1989年のジョー・モンタナ(当時サンフランシスコ・49ers)と、2008年のカート・ワーナー(当時アリゾナ・カージナルス)に並ぶNFL史上最多タイの11個を記録。さらに49ersとの頂上決戦でも、パス287ヤード、3タッチダウンを記録し、初のスーパーボウルMVPに選ばれた。

 かつてフラッコがオフェンスで失敗してベンチに帰ってきたとき、ルイスにこう言われたという。

「俺たちディフェンス陣がボールを奪ってやるから、失敗を恐れるな」

 オフェンス陣を鼓舞し、ディフェンス陣を統轄し、レイブンズを2度目の頂点に導いたNFL史上最高のラインバッカー、レイ・ルイス。彼の存在なくしてレイブンズの優勝はなかった――今年のスーパーボウルはそう言っても過言ではない。

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