【Bリーグ10年目の開幕】「沖縄愛」を胸に琉球のリング下で体を張るジャック・クーリー 「キングスのファンは世界一だよ」 (3ページ目)
【14を背負って臨んだアメリカ代表】
今夏には"第一の故郷"であるアメリカ代表として「FIBAアメリカップ2025」に出場した。選出は初。惜しくも3位に終わったが、「コンディションを整えられた感触がある」とBリーグ開幕に向けて一早く体を作ることができた。
星条旗に加え、背には"ミスター・キングス"と称される岸本の14番を背負った。普段は45番を着ける。「アメリカ代表として、そしてキングスの一員として出られたことを誇りに感じました。すばらしい経験をチームに持ち帰り、今季に生かせられたらと思っています」と、チームへの還元に意欲的だ。
琉球に加入してから6年。来日した翌年の2020年に沖縄県内の役所に婚姻届を提出して結婚し、その後に子どもも授かった。
「自分の人生における大きな出来事が起きたのも沖縄でした。それもあり、特別な感情を抱いています」
南国の"小さな島"に深い愛着心を抱く。
沖縄のために----。その思いがハードワークの原動力になっていることは間違いない。2022-23シーズンに琉球が初優勝を飾った際は、コート中央のマイクで「沖縄は小さな島だけど、そんな小さな島のチームが優勝できたんだ」と誇らしげに語っていた。出身地はアメリカでも、沖縄を代表して戦っている気持ちは人一倍強い。
ホームゲーム後にメンバー全員がコートを一周する際は、必ずクーリーが最後まで残る。視界に入る一人ひとりに丁寧に手を振り、柔らかい笑みを向ける。大黒柱としての力強いプレーだけでなく、誠実な人柄もファンの心をつかむ大きな要因だ。
所属7シーズン目も「すごい楽しみにしていることは変わりません」と、2025-26シーズンの開幕に向けて高揚感をうかがわせる。昨季の準優勝メンバーがほぼ残留し、さらに日本代表の佐土原遼も加入して厚みが増した。「自分が在籍してからのキングスで、ベストと言えるチームに仕上がっている」との自負がある。3シーズンぶりの王座奪還へ、決意は固い。
今季も琉球のゴール下にはクーリーがいる。巨体を揺らし、シーズンを通してひたすらに体を張り続けるはずだ。第二の故郷である沖縄のために。心から愛し、愛されるファンと、再び優勝の歓喜を共にするために。
著者プロフィール
長嶺真輝 (ながみね・まき)
沖縄在住のスポーツライター。沖縄の地方新聞社の記者時代に東京五輪、Bリーグを担当。現在はバスケットボールや高校野球を中心に各競技を取材し、雑誌やWEB媒体などで記事を執筆。「日本バスケの革命と言われた男」(双葉社、沖縄書店大賞優秀賞)の取材・文担当。
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