【Bリーグ10年目の開幕】宇都宮ブレックスがリーグ屈指のビッグクラブとして放つ異彩のフランチャイズカラー 礎は「草の根」活動 (3ページ目)
【約20年の歴史で紡いできたもの】
2026-27からはリーグが再編され、トップカテゴリーは「Bプレミア」として始動する。BリーグがNBAに次ぐ世界第2位のリーグを目指すなか、盟主のひとつである宇都宮も「継続性のある成長」を続けていかねばならない。宇都宮は売上30億円を突破した4つ目の球団だが、その数字は通過点だ。
ただ、現状使用するブレックスアリーナ宇都宮や日環アリーナ栃木での試合はすでに満員が続いている。全国に多くのアリーナが建設されるなかで、宇都宮にも大きく、モニュメンタルな「箱」が必要となる。
「インパクトを大きく出せる成長はアリーナが手に入らないと難しい」と藤本氏は言う。建設費や人件費の高騰などの影響で新アリーナについての発表は遅れてはいるものの、球団としては「必ず実現させる」(藤本氏)方向で動いているという。
2009-10シーズン。当時、リンク栃木ブレックスの名で戦っていたチームは創部3年目、JBLに昇格してわずか2年目にしてリーグ制覇を遂げた。ファイナルの舞台は中立地、代々木第二体育館。観客席は――もちろん今と比べると規模はずっと小さかったように感じられはするものの――多くのブレックスファンによって埋められていた。常勝は早くから始まっていた。
だからといっていまの、Bリーグでの隆盛が想像できたか。優勝した2009-10シーズンですらまだ球団の売上は5億9000万円ほどでしかなかった。チームの創設から籍を置いている藤本氏は「こんな規模になるようなイメージはまったく持っていなかった」と振り返る。
会場に入れば、そこには黄色の海が広がる。プレーオフのような大舞台となればなおさら、その波のうねりは大きくなる。約20年の歴史のなかで紡いできたことの成果が、その光景だ。
リーグ屈指のビッグクラブとなっても、その光景はほかのどのチームが作り出すものとは違っていて、異彩を放つ。
つづく
著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。
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