【Bリーグ10年目の開幕】宇都宮ブレックスがリーグ屈指のビッグクラブとして放つ異彩のフランチャイズカラー 礎は「草の根」活動 (2ページ目)
【人気の背景にあるブレックスの特異性】
球団社長を務める藤本光正氏 photo by Kaz Nagatsuka
現在の宇都宮は、もはや栃木という一地域の枠に収まらない、全国的な人気を有するチームとなった。同時に彼らは「勝利を義務づけられたチーム」にもなった。つまり宇都宮は、競技面でも商業面でも永続的な成功を広く日本中から期待されるチームとなったのである。藤本氏が「外的要因」を強調したのには、そんなところに理由が求められるのかもしれない。
藤本氏もいい選手を獲った、優勝をした、というだけでは「継続性のある成長にはつながらない」と言う。スター選手を契約しても勝てないという例は、国内外にいくらでもある。そうしたチームは往々にして地域、ファンと球団フロントとチームが同じベクトルを向いていない。「勝ちたい」という切なる思いが結集しない。
「ぽっと出で優勝するとか、いい選手が来たからというだけでは継続性のある成長にはつながりません。そのふたつ(草の根の活動と外的な要因)をしっかりとやって、土台を築いたうえに、そういった運の要素で勝ち得たものも加わって、こういう(売上増や優勝)結果になっているのかなと思います」(藤本氏)
宇都宮はまた、選手が変わらない。今シーズンなどは前年在籍した12名のすべてが残留をしている。よそへ移籍した選手はゼロ。チームによってはシーズンが変わるとロスターの半分以上が新規選手になるようなところもあるなど、Bリーグでは選手が絶え間なく着るジャージーを変えていく。だからこそ、中核の選手たちが長年在籍し続ける宇都宮は異質に映る。
宇都宮のファンにとっては、大半の選手が顔なじみとなる。購入した選手のジャージーは何年にもわたって使い続けることができる。選手たちは派手なプレーだけでなく、味方のために自己犠牲を払う「ブレックスメンタリティ」を体現し、それが他とは一線を画す彼らの個性になっている。そしてだからこそ、ファンを惹きつける。ファンはより熱狂的になる。
「場合によっては他のチームに行ったほうがプレータイムが長くなるとか、もしかしたら、より高い給料をもらえる選手もいるのでしょうけど、それでもここに残りたいと思ってもらえるようなチームの風土やカルチャーが、彼らが残ってくれていることに貢献しているのかなと思います」
藤本氏は、そう語る。お金などの条件や環境だけでなく、ブレックスのジャージーを着続けて黄色く染まるアリーナで戦い続けながら勝利を目指すことの価値に、選手たちは代えがたいものを見出しているのかもしれない。
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