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バスケ女子日本代表 ゲインズ新HCが掲げる「オーガナイズド・カオス」「ポジションレス・バスケ」とは (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文・写真 text & photo by Kaz Nagatsuka

【ゲインズHC色が反映された顔ぶれとチームの雰囲気】

ゲインズHCは自身の色をチームづくりの初期段階から明確に反映している photo by Kaz NagatsukaゲインズHCは自身の色をチームづくりの初期段階から明確に反映している photo by Kaz Nagatsuka 選手の人選もゲインズHCの色が出ている。同氏は当初からベテランの経験を下の世代が吸収していくことで自然な新陳代謝を施していくと述べていたが、冒頭でも触れたとおり、上は35歳の髙田真希(デンソー)や34歳の渡嘉敷来夢(アイシンウィングス)、32歳の宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)といったオリンピックなどの世界大会への出場実績も豊富な顔ぶれが揃っている。一方で今野や藤本愛瑚(ENEOSサンフラワーズ)、最年少・19歳の田中こころ(ENEOS)、ジャマイカ出身の父親を持ちアメリカで生まれ育った中村ミラー彩藍(ペンシルベニア大学)といったこれまでA代表に縁が薄い、あるいはまったく初めての招集となった人材も集った。ゲインズHCの手元のパレットにはこれまでとはまた違った色を揃えている−−そんな印象だ。

 選手たちの様子を観察していると、平易な物言いをするならば実に楽しそうである。換言すれば、モチベーションに満ちている。代表の選考は精神的に選手をすり減らす部分があるだろうが、多くの選手たちがコミュニケーションに長け、「楽しみながら上達していこう」、「ミスはしてもいい。そこから学んでいくんだ」といった言葉をかけ続けるゲインズHCの指導力の賜物ではないか。

 6月24日には、7月に行なわれる有明アリーナでの強化試合と事前の第4次合宿のメンバー、15名が発表された。平均身長は179.1cmと従前のチームと比べてかなり高さが増した(パリオリンピックでのチームの平均身長は173.6cmだった)。170cm未満の身長の選手は赤木 里帆(富士通レッドウェーブ)のみだ。また、純然たるPGがいないことも、ポジションレスを志向するゲインズHCのバスケットボールが色濃くにじみ出ている。実際、Cだった髙田がPFに、馬瓜がPFからSFに、東藤がSGからSG/PGへと当初からの登録ポジションが変更になっていることも、その証左と言えるかもしれない。

 2023年の前回大会で準優勝に終わり6連覇を果たせなかった日本は、今回のアジアカップで覇権奪還を目指す。ここまでの強化試合はさまざまなことを試みるところに一定程度の重きが置かれてはいたが、本大会では「本当のトーナメントのように戦うし、全部を出し切ります」とゲインズHCは言う。

 アジアカップは新生・女子代表のあくまで序章でしかないが、次章以降が面白い物語となっていくには出だしが肝要だ。来夏のワールドカップ、2028年ロサンゼルスオリンピックに向けて、士気高いチームがどのようにチーム力を高めていくのか、見届けていきたい。

著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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