検索

バスケ女子日本代表 ゲインズ新HCが掲げる「オーガナイズド・カオス」「ポジションレス・バスケ」とは (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文・写真 text & photo by Kaz Nagatsuka

【これまでのスタイルに加味されたテイスト】

東京五輪代表の25歳・東藤なな子も試験的にPGの役割を任された photo by Kaz Nagatsuka東京五輪代表の25歳・東藤なな子も試験的にPGの役割を任された photo by Kaz Nagatsuka 一方で、ホーバス氏も恩塚氏も実践していない、ゲインズ氏独自の試みもなされている。例えば本来はフォワードポジションの今野紀花(デンソーアイリス)や東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)を強化試合でPG起用しているのが、その最たる例かもしれない。ふたりとも6月上旬に愛知県で行なわれたチャイニーズタイペイとの試合では、それまでの練習では一度たりとも担ったことのなかった司令塔でのプレーを指示されたのである。

 強化試合という重圧の少ない場であったとはいえ、今野にしても東藤にしてもゲインズHCから突如、PGでのプレーを命じられたことについてメディアに問われると、戸惑いの表情などはまったくなく、むしろ、ちょっとしたいたずらにひっかかってしまった子どもが「やられた」とでもいわんばかりの茶目っ気のある笑顔を浮かべていた。

 高校時代にはボールハンドラーをしていた今野とは違い、東藤に至ってはそういった経験は彼女のキャリアのなかでほとんどなかったはずだ。ゲインズHCは東藤のPG起用について「彼女を簡単ではない状況に置きましたが、彼女があの役割を与えられたことでどのようにプレーをするのか見ることが主眼でした」と話している。

 今野は所属のデンソーではPF(パワーフォワード)でプレーすることが多く、代表でも原則SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)でプレーする。そんな彼女がPGに取り組むことは自身にとってもゲインズHCにとっても「未知なエリア」としつつ、そうした領域に恐れを抱くのではなく、挑んで、壁を取り払いながら前進していくことこそが同HCのチームのやり方なのだろうと推し量った。

「(ゲインズHCは選手たちに向けて)シュートを12本打って(成功は)0本でもいい、外してもいい。ただ、打つという『瞬間』を恐れるなと。自分たちがその瞬間をつくる側だから、という声かけとかもしてくれていて。そういう恐れないで、未知なところに挑戦できる文化があると思うので、私にとっても自分の進化にとってすごくよい状況ですし、ものにしたいなという感じです」(今野)

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る