河村勇輝と富永啓生ーーGリーグオールスターで発揮されたそれぞれの存在感と互いを支え合うふたりの友情 (2ページ目)
【富永は右肩上がりの調子が再び自信に】
河村と長い時間をともにした富永のほうも、今回のGリーグ・アップネクストゲームでは存在感を十分に見せた。途中出場で得意の3ポイントシュートとフローターを決め、5得点。余裕を持ったプレーでビッグステージを楽しみ、何よりも大きいのは、好調時の富永の傍若無人なまでの自信が戻ってきていたことだろう。
昨年12月下旬、所属するインディアナ・ペイサーズ傘下のGリーグチーム・マッドアンツでベンチに張り付けられていた際の富永の表情は、やはり精彩がなかった。それから約1カ月半が過ぎ、Gリーグでの過去4試合の得点は8-9-10-17と右肩上がり。なんと4戦連続でキャリアハイを更新したあとに迎えたNBAオールスター2025でも、その好調と好ムードを継続している印象があった。
「以前はまずプレータイムがまったくもらえていなかった。もらえたらやれるっていう自覚は全然ありましたけど、こうやってプレータイムがもらえて、長い時間、出れば出るだけ、やっぱり自分のプレーの強みが出てくると思っています。今は、プレータイムがもらえて、自分のプレーができているのかなと思います」
もちろんいつでも自分自身を信じきれていたわけではなかったはずだ。ネブラスカ大時代は地元のヒーローだった富永のような選手なら、その難しさはなおさらだろう。それでも常に自分を鼓舞し、河村のような友人の力を借りて、踏みとどまってきた。このまま苦境を這い上がっていけるのであれば、その道のりには大きな価値がある。
「シーズンが始まる前から、(Gリーグが)大変なリーグだっていうのはもともと聞いていた部分ではありました。(だからこそ)辛い時期を乗り越えなければいけないと思っていたので、そこは前向きに、自分のできることをやって、常にstay readyの状態、いつも準備できている状態でいることを意識していました。彼(河村)の存在も大きいですし、我慢して我慢してと思っています」
結局この日、河村と富永が所属したチームは、4チームによるミニトーナメントの初戦で敗れたものの、球宴の舞台での勝敗に大きな意味はない。それよりも、それぞれの形で持ち味を発揮できたことのほうが大きかった。ここで過ごした時間もまた今季後半戦、そしてその先のキャリアのなかで意味を持ってくる。
"オールスターは時代を映す鏡"という表現があるが、マイナーリーグに当たるGリーグとはいえ、NBAが開催したオールスターにふたりの日本人選手が選出されたことは、日本バスケの成長を物語る一例だったのだろう。河村のアメリカでの実績にしても、まだほとんどはGリーグでのものであり、先輩の八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)、渡邊雄太(現・千葉ジェッツ)のようにNBAの舞台で縦横無尽に駆け回るのにはもう少し時間が必要になるだろう。
それでも、このふたりはそれぞれのステージで何かをつかみ、それぞれの形で前に進んでいける。よい時でも、そうではない時でも、Better Together――。
一緒にコートに立ったという意味では日本代表以来のビッグイベントを終え、後半戦での彼らのさらなる飛躍が楽しみである。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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