「レゲエ校歌」で話題の和歌山南陵、廃校寸前から再建への道 バスケ部はウインターカップに出場 (2ページ目)
一方で老朽化が進む学校施設を修繕するため、クラウドファンディングも始めた。教職員もフル稼働し、たまりにたまった行政指導の書類や決算書の問題も、過去にさかのぼって片づけていった。
旧経営陣とそりが合わず離職した教員のなかには、甲斐から声をかけられて復職した者もいる。そのひとりである教員の古川彰弘は、こんなエピソードを明かした。
「学校現場には生徒ひとりひとりの小学校・中学校・高校の履歴を記録した『指導要録』という書類があるんですけど、見当たらないものもあって......。過去の在校生をさかのぼって、関連する学校に1件1件『指導要録をもう一度発行してください』と電話して回りました。『それは大変ですね、わかりました』という反応の方もいれば、『指導要録がないってどういうことですか? 経緯を説明する書類を送ってください』という方もいて。本来学校になければおかしい書類ですから、それも当然の反応なんですけどね。とにかく書類を集めるのは大変な作業でした」
全校生徒18名の学校では、毎日を過ごすだけで赤字がふくらんでいく。甲斐は明るく笑いながらも、「毎月1500万円の赤字です」と実情を明かした。
【発信力のある学校にしたい】
現代の日本社会は、少子高齢化の波が押し寄せている。経営不振で淘汰される学校は今後も増えていくに違いない。それでも、甲斐はなぜ和歌山南陵の再建を引き受けたのだろうか。率直に尋ねると、甲斐はこう答えた。
「日本を立て直すための人材を育てたいという思いが第一にあります。きれいごとではなく、生きるための力を持って、助け合える生徒を育てて、発信力のある学校にしたいんです。たしかにこんなにズタボロの学校ですから、『よう引き受けましたね』と言われます。でも、私はいろんな事業を見てきましたけど、学校経営で潰れるなんて考えられないんですよ。学校法人は税制上優遇されていますし、国からは補助金が出て、保護者からは学費を納めてもらえる。学校に魅力さえあれば、人もお金も集まるんですよ」
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