河村勇輝のNBA挑戦をキーワードで紐解く〜アメリカ未経験、身長172cm、グリズリーズの状況、Gリーグ行き〜 (2ページ目)

  • 宮地陽子●text by Miyaji Yoko

【173cm以下のNBA選手は77年の歴史で14人のみ】

 河村にとって、NBAロスター入りの最大の鍵は、低身長による弱点をどれだけカバーし、逆に自分の武器にできるかだ。

 何しろグリズリーズから発表された河村の登録身長(5フィート8インチ=173cm)以下でNBAロスター入りした選手は、77年のNBAの歴史においてわずか14人(著者調べ)。ほとんどの選手は数cmの上乗せをした身長を登録している(たとえばBリーグでは173cm登録の田臥は5フィート9インチ=175cmで登録されていた)ことを考えると、実際には同じサイズの選手はもう少し多いだろうが、それでも稀な存在であることに変わりない。

 その中で、160cmながらNBAで14年(1987-2001)も活躍したマグジー・ボーグスや、165cmの身長で13年(1999-2012)プレーしたアール・ボイキンズのように、河村よりさらに小さいサイズながら長くNBAに居場所を作った選手たちもいる。

そのふたりに共通しているのは、高さはなくても力強さを備えていたことだ。河村は現時点では彼らほどの力強さはないが、スピードやゲームメイク力でサイズを補うことができれば道は開ける。また、ディフェンスが下がらない程度に3ポイントシュートを決められることも重要だ。得意のしつこいディフェンスでスティールを奪い、トランジションで攻めるなど、試合のテンポを変えることができれば、チームから必要とされる存在にもなりえる。

 昨季のNBA登録選手で登録身長が5フィート8インチ(173cm)以下だったのは、ジェイコブ・ギルヤード(今季はクリーブランド・キャバリアーズとエグジビット10契約)だけだった。ただ、そのギルヤードが2023年4月から今年2月までツーウェイ契約選手(*)としてグリズリーズに所属していたことは、河村にとってもプラス材料だ。グリズリーズがサイズの小さい選手でもチームの戦力になりえると考えるチームであるからだ。実際、河村はグリズリーズから「ギルヤードのような選手になってほしい」と言われており、それが複数のチームからオファーされたなかで、グリズリーズを選んだ理由だったと語っている。

*契約を締結したNBAチームとその下部組織Gリーグのチームの両方でプレーできる契約。渡邊雄太(現・千葉ジェッツ)は2018年にグリズリーズとツーウェイ契約を交わし、18-19シーズンに自身初のNBA公式戦出場を果たした。

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