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パリオリンピック女子バスケ 世界の加速的レベルアップにのまれた日本 今後目指すべき方向とは?【萩原美樹子の視点】 (2ページ目)

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

【「点」ではなく「線」で検証すべきパリ五輪】

 今回のパリオリンピックを振り返ってみると、前回は銀メダルを獲得したわけですし、戦績としては後退したと受け止められるのは仕方がないことでしょう。

 しかし、「点」ではなく、冷静に「線」で捉えることも重要かと思います。

 東京大会での銀メダルは、強化策が実っただけではなく、いろいろな運を味方につけたことも大きかったと思います。組み合わせ、地の利。

 たとえば、国際大会では練習時間が制限されます。日本の選手たちは練習の虫で、普段は朝からシューティングを欠かしません。しかし、オリンピックでは練習時間も指定され、いつものルーティンができません。地元開催の東京大会では、それが可能だったのです。もちろん、パリではどの国も条件は一緒ですから、それを言い訳にはできませんが。

 目標設定も、前回、銀メダルを手にしてしまった以上、次に目指すのは金メダルしかありません。恩塚亨ヘッドコーチ(HC)は、その難しいタスクにチャレンジしたわけです。

 恩塚HCが描いた「スクリプト」は、守って、走って、非常に細分化された状況を想定した決め事のなかで攻撃を展開する。40分間強度の高いバスケットボールを展開するために、選手は短時間で交代し、常にフレッシュな状態を維持する。2年前のワールドカップではプールステージ(予選)敗退に終わったものの、オリンピック予選を勝ち抜き、チームとしての力は向上していました。

 しかし、世界はさらに先を行っていた。それがパリオリンピックだったと思います。

 今回は波乱が続き、世界ランキング2位だったグループBの中国は予選敗退。グループBではナイジェリアがオーストラリア、カナダを下して準々決勝進出を決めて、関係者を驚かせました。ちなみに、東京大会で日本はナイジェリアを102対83というスコアで圧倒していました。

 世界のレベルが急速に、加速度的に上がっているのです。その背景には情報の均質化もあるでしょう。そしてレベルアップにひと役買ったのが、ほかならぬ東京オリンピックの日本だったと思います。

 走る、シュートを打つ、高確率でスリーを決める−−そのスタイルでフランスには2勝、ベルギーにも勝ち、決勝まで駒を進めました。その結果、対戦相手から警戒される立場となったわけです。

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