女子バスケ・山本麻衣が繰り返すフレーズ「迷いなく」 163cmの「小さな巨人」がパリ五輪で光り輝く (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【世界トップクラスのスコアリング能力】

 山本は鍛え上げた体の強さをコートでアジャストさせている。

「海外で2番のポジションで出ると、どうしても、(身長)180、190cmの選手につかないといけないことがあって、そこで当たり負けしないように、とは思ってきました。今回の合宿に入る前も、トレーニング量を増やして体作りはしてきて。去年のリーグ中から、パーソナル(トレーナー)に見てもらっています。それが成果につながってきているのかなと」

 自分より20cm以上も身長が高いニュージーランドの選手たちを、山本はものともしなかった。手足のリーチ差も含めると、外から見た以上の"距離感"だろう。しかし、彼女が立ちはだかると強さがあったし、体を当てられても崩れない。下半身の軸がぶれず、手に吸いついたボールを自在にリリースできる。小さな体であることなど百も承知で、自在に動かせるまで運用力を高めているのだ。

「牛若丸と弁慶」「ダビデとゴリアテ」「柔よく剛を制す」......。

 そこで起こる"波乱"の瞬間は、物語になる。それはひと言で「痛快」。山本はその作法を心得ていた。彼女なりの正解を見つける姿勢というのか。たとえば3Pシュートをワンハンドで打つか、ツーハンドで打つか、そこにこだわりはない。

「シュートは入ればいい、と思っているんで」

 彼女は言う。

「ワンハンドでも、ツーハンドでも入る確率が高いことが重要で。打てるタイミングが大事なので、ワンハンドでもツーモーションにするなら意味がない。ツーハンドでも速く打てるように」

 最近は男子大学生と練習し、スピード感や体の強さを体感した。その経験は糧になっているという。女子選手と対戦した時、楽に感じるし、自分たちのスピードを感じられる。

 山本は、さらなる向上に挑み続ける。

「山本のスコアリング能力は、世界のトップだと思います」

 そう語ったのは恩塚亨女子日本代表ヘッドコーチで、こう続けている。

「その能力を最大化するための答えが、シューティングガード(での起用)。スキルの要素はいろいろあるんですが、彼女はカオスの中で答えを選び出せる選手ですね。速く合理的な判断ができることによって、より多くの強みを出してくれます」

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