5人制でも「山本麻衣」から「マイ・ヤマモト」へ......女子バスケ、パリ五輪出場の立役者が目指すさらなる高み (2ページ目)

  • 三上 太●text by Mikami Futoshi

【エリートの実績に隠れがちな苦労と我慢】

――つまりエリート街道を進んできたと思われがちだけど、そうではないと。

「はい。トヨタ自動車に入ったといっても、1年目から出られていたわけではありません。やっと主力として試合に出させてもらえるようになったのは、2度目の優勝を果たした3年目ぐらいからなので、それまでは苦しい時期でした。今でこそ日本代表にも呼んでいただき、トヨタ自動車でもスタメンで試合に出て、中心選手と呼ばれるようになってきました。多くの人は、結果が出たところしか見えていないと思うんですけど、トヨタ自動車に入った最初の2年間くらいは本当に苦しくて、試合にも出られないほうが多かったんです。そういう時代にじっと我慢して、きちんと準備をしてきたから、今の自分があると思っています。本当に苦しい時期だったけど、そういう時期があってよかったなと、今は思います」

――そういった苦しい時期に、トップレベルのスポーツを経験されたご両親からアドバイスをもらうことはありますか?

「その苦しい時期でもお母さんから『腐らずにやりなさい』とはよく言われていました。そんな1、2年目の選手がすぐに試合に出られるわけじゃないし、そこで必死にやると周囲から『ヤバいやつ』だと見られるかもしれないけど、とにかく腐らずに自分のやることをきちんとやること、そして謙虚にしなさい、とお母さんからよく言われます。私自身、腐ることはほとんどないですけど、それでも苦しい時期に我慢して頑張りなさいということは言われますね」

――そうした言葉を受けながら、苦しい時期を乗り越える時に何をしてきましたか?

「とにかく自主練習です。オフェンスでも、ディフェンスでも、自主練習を惜しまずに、毎日、自分がしなければいけないことを常にやっていました。やはり常に成長し続けることが大事だと思います。むしろ私は、自分にできないことを見つけるのが楽しいんです。負けず嫌いだから、できないことをできるように絶対したくなる。できないことをそのままにしておくのが嫌なので、その積み重ねという感じですかね。オフシーズンにはワークアウトのためにアメリカへ行くんですけど、本場のバスケットに触れると心を動かされます。本場のバスケットを見るのは違うなって。そうやってまた突き動かされて、もっとやらなければと思えるんです」

――自分の得意なところを伸ばす選手も多くいます。山本選手はそうではないんですね。

「私は自分にできないプレーがあると悔しいタイプです。確かに人それぞれ得意なプレーがあります。私のなかにも得意なプレーはあるけど、ほかの選手の得意なプレーがあったとして、私にそれがなければ、やりたくなっちゃう(笑)。人の得意なプレーも自分のものにしたくなる感じです」

――とにかくすべてできる選手になりたいと。

「そうですね。身長以外は(笑)」

――身長に関しては現実を受け入れながら、いかに究極の自分を目指していくか。

「そうです、この身長でも、シュート力もある、パスもできる、ゲームコントロールもできるっていう、オールマイティーなプレーヤーになりたいです」

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