強敵イランに圧勝しW杯予選5連勝にも富樫勇樹「ここで満足はしていない」 ホーバスHCが目指す日本男子バスケの完成形 (2ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

【ホーバスHCのバスケが浸透】

 思えば1年3カ月前――ホーバスジャパンの船出は不安なものだった。2021年の11月末、仙台で開催されたWindow1にて、中国との2連戦で完敗。このときは、個々が手探り状態だった。ホーバスHCは「15カ月前の中国戦、全然ダメだったね。あの頃だったらバーレーンにも負けていた」と振り返る。それがここまでステップアップできたのは、選手たちが口を揃えて言う「個々の役割を理解」したことにある。

「試合と合宿を重ねるごとにチームの共通認識が全員にできて、細かいタイミングやディティールの部分がよくなったことでイランに勝てたと思います。プレーをしていても、すごくやりがいを感じます」と、先発シューターの須田侑太郎が言えば、キャプテンの富樫勇樹は、「トムさんは選手選考が明確。プレーに特徴がある選手が呼ばれているから、選手たちもどの選手がどういう特徴を持っているかわかってきて、それぞれ役割を理解しています。だから思い切りがよくなって、迷いなくプレーできています」と成長の要因を挙げる。

 とはいえ、自チームと役割が違う代表では迷いはつきものである。そんな迷える選手には「あなたはコレとコレが優れているから、自信を持ってやってほしい」とホーバスHCは明確な指示を出す。各自が得意なことを役割として任命しているので、たとえば、シューターとして打ち切ることを任されている須田のように、各自が「やりがい」を感じるのである。

 こんな意見もある。新加入の渡邉は「トムさんのバスケは今までの代表よりフリー」だと言う。その理由は「東京オリンピック時の僕の仕事は、スクリーンをかけてダイブすることだけでしたが、今はまだ100%自信があるわけではないけれど、ルールのなかで走って跳んで、僕の得意なことができるのは楽しい」と笑顔を見せる。そうした各自の良さを、ホーバスHCはチーム原則のもとで引き出し、パズルのように組み合わせていくのだ。

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