Bリーグ・ポストシーズンで注目したい3人の若き才能たち。大ケガからの復活、「関西人」、悪魔の左手... (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

 常に優勝争いをするチームにおいて、このような状況は危機以外の何ものでもない。だが、吉井裕鷹という無骨に精進を重ねる23歳の存在は、黒く立ち込める暗雲のなかにおいて指す、ひと筋の光のようにも思える。

 チームの台所事情は厳しいが、昨季1試合も出場がなかった196cmのSFにとっては実りが多く、またチームからも戦力として数えてもらえるようになったシーズンとなった。

 東大阪出身の吉井にとって、地元に対する思いは強い。チームHPの選手紹介の「ここだけは絶対に譲れないこと」という設問に「関西人」と記しているほどだ。その言葉どおりと言っていいかはわからないが、吉井は地方の才能ある若手が集まる関東の大学へは進学せず、大阪府吹田市の大阪学院大学でプレーして「打倒・関東」を掲げていた。

 2018−19シーズンは特別指定選手として大阪エヴェッサでプレーし、16試合の出場で6試合に先発。平均で5.3点を挙げるなど華々しいプロデビューを飾った。しかし今は関西を離れ、東京のアルバルクという強豪軍団の一員として戦う。ここでプレーすることから得られるものは、さらなる成長を見据える彼にとって、また大きく違ったものであるはずだ。

 前年に引き続き、今季も序盤は出番をほとんどもらえなかった。だが、そんな状況も年が明けると変化。エヴェッサ時代同様の出場時間を得るようになり、同時に優れた得点能力もしばしば見せてきた。彼の身長は学生レベルならビッグマンだが、高校時代からプレーの幅を持たせるためにシュート等ほかのスキル向上に取り組んできたことが生きた。

 そしてロシターら主力が欠場となると、吉井の出場時間は20分を超えるようになり、2試合で先発出場も果たした。そのなかのひとつ、4月30日の川崎ブレイブサンダース戦では3Pを2本沈めるなど、今季2度目のふたケタ得点となる11得点をマーク。ファウルを3度もらうなど物怖じせずにリングにアタックする姿勢も見せて光を放った。

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