奇跡の集結から29年。初代「ドリームチーム」12人たちの今(後編) (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

 1980年代後半、ティム・ハーダウェイ、ミッチ・リッチモンド、クリス・マリンの3選手は「ラン・アンド・ガン」と呼ばれたアップテンポなオフェンスでウォリアーズを牽引。ヒップホップグループ「Run DMC」にひっかけて、3人の頭文字を取って「Run TMC」と呼ばれた。

 そのうちの"C"ことクリス・マリンは、セント・ジョーンズ大時代の1984年、ロサンゼルス五輪に出場して金メダルを獲得。そしてプロ8年目を迎えた1992年、バルセロナで再び五輪のコートに立った。

 マリンはシューティングガードとスモールフォワードの2ポジションでプレーするスイングマンで、リバウンドやアシストにも長けていた。だが、なによりも彼を有名にしたのは、左手から繰り出される素早く精緻な3Pシュートだろう。

「白人で長距離シュートが得意」ということで、よくラリー・バードと比べられた。バルセロナではそのバードと同じ釜の飯を食べる経験を得たという。キャリア後半を過ごしたインディアナ・ペイサーズでは、ヘッドコーチだったバードの下でプレーし、1999−2000年シーズンにはファイナルへ進出している。

 2001年の現役引退後は、テレビ解説者やサクラメント・キングスの特別相談役、古巣ウォリアーズのGMを務め、2015年から母校セント・ジョーンズ大のヘッドコーチを4シーズン担い、2016年からはランTMCの"M"だったリッチモンドをアシスタントコーチとして招聘した。NBAのスターが大学のヘッドコーチとアシスタントコーチでタッグを組むなど、今も昔もそうあるものではない。

 ちなみに同校ヘッドコーチ時代のマリンは、スポーツ番組で「教え子たちはマリンがどれだけ伝説的なプレーヤーだったかを知っているか」という司会者からの問いに対し、「おそらくテレビゲームを通してか、あるいはグーグルで調べて知っているくらいだろうね」とお茶目な笑顔で応えている。どんな眩しい光を放ったスターも、時の流れには勝てないか。

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