熾烈なサバイバル。渡邊雄太が実感しているGリーグとNBAの「格差」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文・撮影 text & photo by Sugiura Daisuke

 豪華でクールなNBAライフへの定着を目指し、Gリーグの選手たちは日々腕を磨いている。NBAの"椅子"には限りがあるため、チームメートも事実上はライバル。渡邊が2018-19シーズンに多くの日々を過ごすであろうGリーグとは、そんな環境なのだ。

 Gリーグの多くの選手たちには、"ハングリーでアグレッシブ"という形容がぴったりくる。試合ではディフェンスを犠牲にしてでも点を取りにいくシーンが目立ち、ハッスルもシーズン最初の5戦連続で110得点以上。スリリングな点の取り合いになる試合は多いが、正直、ディフェンスのよさとバスケIQの高さ、献身的なプレーといった渡邊の長所が最大限に生きるゲームとは思えない。

 Gリーグ選手は全球団からコールアップが可能というシステム(2ウェイ契約選手は除く)もあり、一部のプレイヤーが見栄えのいい数字を意識しているのは明白だ。とくにガード選手のボール独占傾向が目につき、それはハッスルも例外ではない。

 今季最初の6戦ではポイントガードのジェボン・カーターが1試合平均18.2本のシュートを放って20.8得点、シューティングガードのブランドン・グッドウィンも同16.3本で23.3得点。控えガードのマーケル・クロフォードですらも、1試合平均10.5本のシュートを放っており、スタメンの渡邊(同9.0本)よりも多い。ゲーム中には渡邊にはなかなかボールが回ってこない時間帯があり、オフェンス面でリズムに乗るのは容易ではないはずだ。

「最初の2試合はなかなかボールが回ってこないから、『ボールが来たときには自分勝手に攻めなければいけない』という気持ちになってしまっていました」

 11月11日のオースティン・スパーズ戦後に渡邊がそう述べていたとおり、11月3日の開幕戦ではFG2/10で4得点、5日の2戦目はFG3/11で7得点と低調。限られた攻撃機会でよりアグレッシブにと意識するあまり、無理にシュートを打ちにいったことが精度の低さにつながったように見えた。主力のひとりである渡邊が波に乗れなかったことが、開幕2連敗の大きな要因になったことは否定できない。
 
 もっとも、こんな新しい環境でも素早く学び、スランプを長く続けなかったのが適応能力に定評がある渡邊らしいところだ。悔しい2試合を終え、ホームゲームに臨んだ背番号12には、新たな決意が感じられた。

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