【NBA】現役引退→HC就任。デレック・フィッシャーの新たな旅
12月特集 アスリート、現役続行と引退の波間(7)
思えば、デレック・フィッシャーは子どものころから、ずっと引退の準備をしてきたのかもしれない。
現役最後の年となった2013-14シーズンも終わりに近づいたころ、引退後の計画について質問された当時オクラホマシティ・サンダーのフィッシャーは、「今は目の前のシーズンに集中していて、引退のことは具体的には考えていない。でも、引退後に様々な選択肢があるということは、本当に幸せなことだと思っている」と語った。そう言った後に、「選択肢がある」ということが、フィッシャーにとってどういった意味を持つのか、父からの教えについて語り始めた。
恩師フィル・ジャクソン(右)のもとで新たなスタートを切ったデレック・フィッシャー(左)「昔、子供のころから聞かされていた父の教えがあるんだ。それは、『きちんとした行動をとりなさい。まわりの人たちに対して、敬意を持って接しなさい。人生において、選択肢が与えられるような行動をしなさい。人々がともに働き、支援したいと思うような生き方をしなさい』というものだった」
選択肢がある生き方――。長い人生の中で、順調なときや成功しているときに傲慢な態度をとったり、まわりの人たちをぞんざいに扱かったりすれば、時が移り、状況が変わったときには、誰からも相手にされなくなる。それは結局、自分自身が、「自分の選択肢を減らしてきた」ということなのだ。そんな生き方をしてはいけないということを、フィッシャーの父は言っていた。
フィッシャーは、その父の教えをずっと守り続けた。NBA選手として高額のサラリーを得ても、優勝メンバー(2000年~2002年、2009年~2010年の計5度。すべてロサンゼルス・レイカーズ時代)という名声を得ても、品位のある行動をすることを忘れなかった。そして、周囲の人々を助け、リーダーシップを発揮するうちに、まわりから尊敬される存在になっていった。
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