【NBA】4強決定。ファイナルの切符を掴むのはどこだ? (3ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro photo by AFLO

design by Unno Satorudesign by Unno Satoru 対するウェスタン。まずスパーズは、ベンチ層の厚さとチームの完成度で、堂々の3年連続カンファレンス・ファイナル進出を決めた。1回戦のダラス・マーベリックス戦こそ第7戦までもつれ込んだものの、続くカンファレンス・セミファイナルでは、1段ギアを上げてポートランド・トレイルブレイザーズを4勝1敗で一蹴。
 トレイルブレイザーズに唯一敗れた第4戦では、逆転が難しいと判断すると、わずかな可能性にかけて故障者を出すほうが損だとばかりに、ティム・ダンカン、トニー・パーカーといった主力をベンチに下げる余裕すら見せた。続く第5戦では、パーカーが左ハムストリングの負傷で前半に離脱。しかしパーカー離脱後も、ダニー・グリーンとクワイ・レナードがそれぞれ22得点、パトリック・ミルズが18得点と活躍を見せ、パーカー抜きの不安よりも、その層の厚さを際立たせた。さらにパーカーのケガは検査の結果、軽度ものであり、今後の出場に影響はない見込み。各チーム、故障者は増え、疲労も蓄積されていく中、スパーズの層の厚さは、どのチームにもない武器だ。

 一方、生き残った4チームの中で、最も劇的な勝ち上がりを見せたのはサンダーだろう。

 メンフィス・グリズリーズとの1回戦では、プレイオフ初となる4戦連続のオーバータイムを含め、第7戦までもつれ込んだ。勝敗を分けたのは、グリズリーズのインサイドの要、ザック・ランドルフの「シュート」ではなく、「パンチ」。第6戦、ランドルフはスティーブン・アダムスの顎(あご)にパンチを放ち、第7戦は出場停止。ランドルフ抜きのグリズリーズに、サンダーを倒す力はなかった。ニュージーランド出身のルーキー、アダムスは今シーズンだけで、ビンス・カーター(ダラス・マーベリックス)、ジョーダン・ハミルトン(ヒューストン・ロケッツ)、ラリー・サンダース(ミルウォーキー・バックス)、ネイト・ロビンソン(デンバー・ナゲッツ)、そしてランドルフの5選手を退場、罰金処分、もしくは出場停止処分に追い込んでいる。アダムスの身体を張った執拗なまでのタイトなディフェンスは、対戦相手を苛立たせるのに十分だ。

 サンダーのカンファレンス・セミファイナルの対戦相手は、ロサンゼルス・クリッパーズ。オーナーのドナルド・スターリングの人種差別発言でチームに激震が走りながらも、地力で勝ち上がってきた強豪だ。第1戦は、クリス・ポールが自己最多となる3ポイントシュート8本を含む 32得点を挙げ、クリッパーズが122対105と圧勝。サンダーは両エース、ケビン・デュラントとラッセル・ウェストブルックが奮起するも、1回戦のグリズリーズ戦に引き続き、チーム自体はリズムに乗れない。

 その流れを変えたのが、コート外の出来事だった。ケビン・デュラントが2013ー14シーズンのMVPに選出され、その受賞セレモニーで25分間に及ぶ感動的なスピーチを披露。デュラントがチームメイト、チームスタッフひとりひとりの名を挙げて感謝の言葉を述べると、涙をこらえきれないチームメイトが多数いた。また、デュラントは貧しかった幼少期、「自分が食べられなくても、僕ら兄弟が食事を取ったかを気にしていた。お腹を空かしたままで寝ていたのはママだよ。自分を犠牲にして、僕たちを育ててくれた」と、シングルマザーで育ててくれた母を讃え、「ママ、あなたこそ真のMVPだ」と涙ながらに語った。さらに、時にシュートを乱発することで非難を浴びるウェストブルックに対し、「周りはアンフェアな批判ばかりするけれど、何か言われたら俺が真っ先にかばってやるから」と語った。そして、最後に、「この栄誉は家族全員、サンダー、そしてオクラホマ州全体で受賞したものだ」と締めくくる。

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