【NBL】今季キレキレの田臥勇太。NBL初代王者なるか? (3ページ目)
そして、そこに今シーズンのチームの好調さがあると言う。
「シーズン中、プレイオフ圏外だった時期もありました。チームが成長途中で、目指している形に、最初はほど遠かった。ただ、誰もあきらめなかった。このまま目指すスタイルを貫けば、絶対に強くなる感触を誰もが持っていた。ブレなかったのが、今年のチームの強みです」
田臥自身もブレなかった。2メートルを超える選手がひしめくインサイドに切れ込み、時に跳ね返されてコートに激しく打ちつけられることも、時にルーキーのようにルーズボールに頭から飛び込むこともためらわなかった。ベテランならば、そこまでしなくても……と思うほどの、ボールへの執着心を試合中に見せ続けた。
「それができなかったら終わり。できることを、できるときにやらないと。そもそも、自分をベテランだと思ってないんです(笑)」
シーズン開幕前、「2020年の東京五輪が決まりました。出たくないですか?」と聞くと、田臥は、「もちろん狙ってますよ」と、本気とも冗談ともとれる表情で言った。
そして今、再度同じ質問をすると、今度は真顔で答えた。
「ひとつの目標ではあります。そのためにも、ふさわしいレベルのプレイをし続けたい。東京オリンピック、目指していますよ。真剣に」
自身のことを、ベテランだとも、レジェンドだとも思っていない。自分のことを、そしてチームのことも、「チャレンジャーだと思っている」と言う。
「僕らはイースタン・カンファレンス3位でプレイオフに出場する。チャレンジャーの立場です。でも、だからこそ、失うものもないし、守りに入る必要もない。そう考えれば、3位通過もアドバンテージです。今シーズンのNBAのプレイオフも、けっこう波乱続きですよね?」
5月3日から始まるNBLプレイオフ――。優勝までの道のりは険しい。ただ、意気込みを聞くと、彼はこう答えた。
「今シーズンを少しでも長く楽しみたい。このチームで、1試合でも多くバスケがしたい。どのチームよりも長く」
どのチームよりも長く……。見据えているのは、ファイナルであり、NBL初代王者の座だ。その夢が叶った瞬間、田臥勇太は初めて笑うだろう。そして、次の瞬間、こう言うはずだ。
「まだ、ここは通過点」
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