2014.05.01

【NBA】40歳のS・ナッシュはなぜ引退を思い留まったのか?

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by AFLO

 プロスポーツ選手にとって、大きな故障によって試合に出られなくなるということ、あるいは引退するということは、自らのアイデンティティを失うことである。スティーブ・ナッシュ(ロサンゼルス・レイカーズ)にとって、それは突然、目の前に突きつけられた。

故障続きで苦しいシーズンを送ったレイカーズのスティーブ・ナッシュ NBA現役最高齢――40歳のナッシュだからこそ、ここ数年、自身の引退が近いことは意識していたはずだ。その一方、現役を続けるために最大限努力し、まだできるという自信もあっただろう。しかし、それが揺らぎ始めたのは、事故のような偶発的に起きた故障がキッカケだった。

 昨シーズンの開幕2試合目、当時ルーキーだったダミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)のひざがナッシュの足に衝突。そのときは単なる打撲と思われたが、実際には腓骨(ひこつ)を骨折していたことが判明した。それでも当初は、数週間で復帰できる予定だった。しかし当たり所が悪かったのか、その後、神経系の炎症を引き起こし、足から腰にかけて、そして時には脊髄を通じて首にも痛みが出てくるようになった。

 そんな満身創痍の状態でも、ナッシュは昨シーズン50試合に出場した。だが、夏の期間にできる限りのことをしたにもかかわらず、今シーズン開幕時の体調は、まだ万全とは言えなかった。その後も小さな故障が続いて思うように動くことができず、また少し動けるようになっても、神経が過敏に反応して痛むことも多々あったという。

 以前のようなプレイが再びできるようになるのか――。周りからどれだけ否定的なことを言われても、自信を持ち続けることができれば、頑張ることができる。しかし、ナッシュは一時、その自信さえ失いかけていた。そのとき、引退の二文字が目の前をチラついたという。

「今シーズン最初の6~7試合をプレイしたけれど、まったく良くなかった。これでもう終わりなのか、という思いもよぎった」と、ナッシュは振り返る。