【NBA】デリック・ローズが語る「リハビリ、震災復興、そして新シーズン」
それはまるで、『運命』と言ってもいい瞬間だった。
2008年、ドラフトロッタリー(抽選)でシカゴ・ブルズは、わずか1.7パーセントの確率しかない1位指名権を引き当てる。1998年の優勝を最後に低迷し続け、再建を期すブルズが迷うことなく指名したのは、シカゴ生まれのポイントガード、デリック・ローズだった。全体1位指名でブルズに入団したローズを、多くのシカゴ市民は、マイケル・ジョーダンに重ねた。
デリック・ローズ、24歳。現役最高のポイントガードが現在の心境を語った その期待どおり、ローズは高速のドライブを武器に新人王を獲得。3季目となった2010-2011シーズンには、歴代最年少の22歳でレギュラーシーズンMVPも獲得した。チームも、マイケル・ジョーダンが2度目のスリーピートを達成した1997-1998シーズン以来となるイースタン・カンファレンス首位となり、プレイオフの第1シードを獲得。もはや、シカゴ市民のみならず、誰もがローズの時代の到来を予感した。しかし、翌2011-2012シーズンのフィラデルフィア・セブンティシクサーズとのプレイオフ1回戦・第1戦。試合終了残り1分22秒、ローズはドライブインからジャンプした瞬間、バランスを崩してコートに倒れ込んだ。
左ひざの何かが切れる音を、その耳で聞いたローズは、試合後のMRIの検査中、「深刻なケガではないことをずっと祈っていた」と振り返る。しかし、診断結果は、左ひざ前十字靭帯断裂――。「死の宣告に近かった」とローズは肩を落とし、残りのシーズンばかりでなく、2012-2013シーズンの全休をも余儀なくされた......。
そんなデリック・ローズが、1年半ぶりにコートに帰ってくる。
新シーズン開幕直前、気負いはない。
9月5日、契約するアディダスのイベントに参加するために来日したローズは、Tシャツにハーフパンツというラフなスタイルでホテルの一室に現れ、こう言った。
「すべての出来事には、理由がある」
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