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【F1】角田裕毅「人生で最悪のスタート」でクルーに謝罪 しかし「結果」以外で得たものも大きかった (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【角田がスロットルを戻した理由】

 前方がフリーエアになった角田は、良好なペースで周回を重ねていった。

 セーフティカーが出れば10秒以上のタイムロスを喫するリスクはあったが、スタートから何十周もステイアウトするドライバーたちよりも格段に速いペースで走ったことで、10秒以上も稼いでそのリスクを帳消しにし、結果的にポジションを12位まで上げることに成功した。

 追い抜きの難しいシンガポールで、フランコ・コラピント(アルピーヌ)を抜き、最後はPUのセンサートラブルでフェイルセーフモード(※)に入れて出力を落として走らざるを得なくなったイザック・アジャ(レーシングブルズ)の背後に迫り、入賞圏が目前というところまできた。

※フェイルセーフモード=車両に異常が発生した際、システムが安全を確保するために自動的に作動する仕組み。

 しかし、後方には2位争いを演じるフェルスタッペンが迫り、3位ランド・ノリス(マクラーレン)から激しいプレッシャーを受けていた。防戦一方のフェルスタッペンに少しでも乱れた気流を与えないよう、角田は早々に大きくスロットルを戻して2.9秒もペースを落とし、フェルスタッペンを先行させた。

 一方のアジャは、姉妹チームだがお構いなしに走行を続け、通常のブルーフラッグ運用規定である1.2秒以内に追いつかれて青旗が振られた時点で譲り、ロスは最小限に抑えた。

 その結果、角田とアジャの差は大きく広がってしまい、追い抜きは果たせないまま61周のレースを終えることとなってしまった。

「マックスのポジションを守るためにチームプレーをしてくれた。よくやってくれた、本当にありがとう」

 レースエンジニアのリチャード・ウッドは、フィニッシュ直後の角田にどんな言葉をかければいいのかとまどいながらも、角田の悔しさを理解し、寄り添うようにそう伝えた。

「トラフィックに苦しめられたけど、ペースはよかったよ」

 それに対して、角田は冒頭のように、自身の1周目の攻防がすべてを左右してしまったと詫びた。

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