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今季F1王者争いは「撮影していてかなりもの足りない」 ベテランカメラマン2人が漏らす不満「セナやシューマッハの時は...」 (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【フォトジェニックなドライバーは?】

ーーちなみに今のF1ドライバーのなかで自分が撮られることをきちんと意識しているのは誰ですか?

桜井 最近は表彰式でファンやカメラマンに見えるようにシャンパンを振らないドライバーが多いです。マックス・フェルスタッペンもそう。写真や映像に撮られることを意識しているのは、ルクレールぐらいですね。だから彼の写真だけで完結しちゃう時もありますが、ルクレールは今シーズン1度も勝っていません......。

熱田 第12戦イギリスGP(7月6日決勝)でキック・ザウバー(ステーク)のニコ・ヒュルケンベルグが初めて表彰台に上がり、ヒュルケンベルグ本人はもちろんチームのスタッフもすごく盛り上がっていました。3位であれだけ歓喜しているんですから、優勝したらもっとうれしがるはずですよね。

 繰り返しになりますが、マクラーレンのふたりはそんなにうれしそうではないです。たとえばピアストリが優勝した時に、レース後に2位と3位のドライバーもインタビューされる時間がありますよね。そういう時にピアストリがひとりになるタイミングがあるので、喜びをかみしめる瞬間を撮ろうと思ってずっと狙っているのですが、素の表情に戻って水を飲んでいるだけ。過去、レース後のシューマッハは、もううれしくてうれしくて仕方がないという表情をしていたのですが、そういうふうに感情的になることがいっさいないんです。

F1の2025年シーズン後半戦を展望した photo by Takana WataruF1の2025年シーズン後半戦を展望した photo by Takana Wataruこの記事に関連する写真を見る

桜井 彼らを擁護するわけじゃないですが、今のF1ドライバーは忙しいんですよ。チームのミーティングやメディアの取材が詰まっているうえに、レースが始まる直前までVIPゲストがいるパドッククラブで話しています。マシンに乗り込むまで慌ただしく動いています。

 レースが終わったら終わったで年間24戦もあるわけだから、次の移動のことも考えなきゃいけない。喜びに浸っている場合じゃないのかもしれません。ただ、ファンだって一緒に喜びたい。表彰台のセレモニーをする少しの間だけでいいので、みんなを楽しませるエンターテイナーとしての振る舞いをしてほしいですね。

後編につづく

【プロフィール】
熱田 護 あつた・まもる/1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。F1取材は今年で600戦を超え、日本人最多取材回数を誇る。9月25日に『DRAMATIC CIRCUS F1カレンダー 2026』(デジタルカメラマガジン責任編集/インプレス)を販売予定で現在予約受付中。カレンダーのロゴと流し撮りをイメージしたステッカーとスマートフォン壁紙用画像が付いたAmazon限定版も発売。

桜井淳雄 さくらい・あつお/1968年、三重県津市生まれ。1991年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに500戦以上を取材し、F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。『スポルティーバ』や『週刊プレイボーイ』をはじめ、さまざまな媒体に写真を提供している。

著者プロフィール

  • 川原田 剛

    川原田 剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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