アイルトン・セナの最期は「覇気がないというか、苦悩に満ちていた」日本人F1カメラマンが目撃した表情の変化 (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

【なるほどなあ、徐々に気がついたセナの魅力】

 僕はセナを詳しく知りませんでしたが、レンズ越しに見る彼はフォトジェニックでした。速いだけでなく、絵になるんです。だから人気があるんだと取材を通して徐々にわかってきました。なるほどなあ、と。

 セナは表情がいいですし、自分を見せるのも上手でした。たとえば、表彰台に上がった時によくシャンパンを自分にかけたりしていましたが、エンターテイナーというか、サービス精神がありました。

 僕が印象に残っているのは、1992年の第11戦のハンガリーGP。このレースではセナが優勝しているのですが、チャンピオン争いはウイリアムズのナイジェル・マンセルがシーズン開幕から独走。

 ハンガリーGPで2位に入ったマンセルが自身初のタイトルを獲得しました。セナは優勝したものの、チャンピオンになれないことが決まり、表彰台に上がる前にパルクフェルメ(車両保管所)で悔しくてひとり泣いていました。

 でも、マンセルがウイニングランから戻ってきてマシンから降りると、そこにセナが駆け寄って、ふたりで抱き合って健闘を称え合っていました。そのあとの表彰式でもセナはマンセルの手を持って祝福していました。

 そういう人間的な部分、スポーツマンシップを持っていました。それもセナの魅力のひとつだったと思います。

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