ハース新代表・小松礼雄はF1でのキャリアは20年 最下位のチームをどう立て直す?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

ハースF1小松礼雄チーム新代表インタビュー(後編)

◆小松礼雄・前編>>「メンツや権力はどうでもよく、マシンの速さを追求する」

 ハースのチーム代表に就任した小松礼雄だが、その前途は決して楽な道のりではない。

 元フェラーリのシモーネ・レスタが開発指揮を執った昨年型マシンは、一発の速さはあるものの極端にリアタイヤに厳しく、レースではどのチームよりもタイヤのオーバーヒートと性能低下に苦しみ、勝負にならなかった。

 にもかかわらず、開発責任者はその問題をきちんと認めなかった。それによってマシンの改善が進まず、本来なら前半戦に投入すべきだったアップデートはシーズン終盤のアメリカGPまで遅れてしまった。

小松礼雄は2003年からF1の世界で戦っている photo by BOOZY小松礼雄は2003年からF1の世界で戦っている photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る 今のハースが抱えている改善すべき点について、小松が昨年語っていたのはあくまでエンジニアリングディレクターとして把握できる範疇での推察であり、現場と開発部門との連携不足や自分の責任を認められない組織の問題などを断定するつもりはない。これからチーム代表としてあらゆるスタッフと連携し、問題点を明確にしていくという。

 ハースの本拠地はイギリス・バンベリーにある。だが、空力部門はイタリア・マラネロのフェラーリ内にあり、マシン製造はイタリアのダラーラ社を中心とした外注企業に頼っている。

 拠点が分散していることによるコミュニケーション不足があったことは、イギリス側のトップにいた小松エンジニアがイタリア側スタッフと密に連携することが許されなかったことからも明らかだった。まずは、これまで直接話すことができなかったスタッフたちから聞き取りを進め、問題点を把握していかなければならないというわけだ。

「まずはチーム内でしっかり、コミュニケーションを取ることです。これまでの僕の役職では、特定のエリアにしか手を伸ばすことができなかったことを認識しているからです。

 たとえば、なぜ何かがうまくいかないのか、その理由を知ることができなかったり、理由らしきことがわかってもそれが事実かどうかを確認することもできませんでした。僕が考えている理由が事実なのか事実でないのかもわからないし、それをここで語ることは一部の人たちに対してはフェアではありません。

 だから今、イタリアのスタッフたちとも密にコミュニケーションを取っていこうとしているんです。ひざを突き合わせてフェイストゥフェイスで話し合い、チームの進むべき方向性や現状のさまざまなことに対して、彼らがどのように感じているのか──。それを理解して、彼らときちんとした関係を築き、前に進みたいと考えているんです」

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