角田裕毅、F1キャリアの大きな分岐点 入賞をフイにしたミスを認めることができるか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【なぜ角田は焦ってピアストリを抜こうとしたのか】

 ここで問題にしなければならないのは、どちらが悪いかではなく、アルファタウリにとっては貴重な入賞のチャンスを自ら逃してしまったということだ。

 後方からは好ペースのランド・ノリス(マクラーレン)が迫ってきてはいたが、彼に抜かれたとしてもまだ9位。その後方のアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は角田よりペースが遅く、9位入賞は確実だった。

 そしてハードタイヤの角田に対して、ピアストリは3周古いミディアム。ピアストリのタイヤのほうが先にタレていき、周回が進めば進むほど角田に有利になるはずだった。

 路面温度が下がっていくなかでピアストリのタイヤが思ったほどタレずに攻略が難しかったとしても、最後尾スタートのレースだっただけに9位入賞というのはチームとしては十分すぎる結果だった。

「裕毅はピアストリを抜くのに少し焦ってしまった。裕毅のほうが速かったし、レース終盤に抜けたかもしれないけど、接触してスピンしてしまったんだ」(ジョナサン・エドルス/チーフレースエンジニア)

 この何周も前から、角田にはブレーキ温度を下げるためにリフトオフの指示が出されており、2〜3周攻めたあとはストレートエンドでスロットルを戻して、冷却する走りが求められていた。だが、角田はピアストリに対して攻め続けた。

 ピアストリの前にはチームメイトのダニエル・リカルドがおり、角田は彼に追い付こうと意識して功を焦ってしまったのかもしれない。レース途中の赤旗中に新品タイヤに履き替えていた角田はリカルドより7周もフレッシュなタイヤを履いており、ピアストリを抜けば角田のほうがコンマ数秒は速いペースで走行できることは明らかだったからだ。

「裕毅がピアストリを抜いたら、後続を抑える役割をしてもらうというのが我々のプランだった」

 エドルスがこう語るとおり、アルファタウリは角田とリカルドを自由に戦わせるつもりはなかった。チームが望んでいたのは、望外のパフォーマンスを発揮したこのメキシコシティで巡ってきた入賞のチャンスに、ポイントを確実に持ち帰ること。マクラーレンやメルセデスAMGと無理に争って目の前のポイントを取り逃すことではなかった。

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