角田裕毅の絶望的な週末 限界を超えて攻め続け大苦戦も「後悔はない」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【角田もアルファタウリも空回り】

 曲がらないマシンと格闘し続けた角田は、どうにもならないレース展開に対する苛立ちと焦りもあったのか、トラックリミット違反で計20秒のタイム加算ペナルティを科されてしまった。その結果、完走19台中19位という絶望的なリザルトに終わってしまった。

「詳しく見てみないとわからないですけど、ものすごくアンダーステアが強かったので、マシンにダメージがあったんだと思います。でも、トラックリミット違反を取られないようにするのが自分の仕事なので、難しかったとしてもそれは言い訳にはなりません。次へ向けた改善点です」

 角田自身としても、予選のトラックリミットによるタイム抹消から1周目の接触、決勝の度重なるトラックリミット違反と、今シーズンこれまでの成熟したドライビングが嘘のような「とっ散らかったレース週末」だった。

 もちろん、マシンのペース不足がその根底にある。

 ライバルが大きなアップデートを投入してマシン性能を向上させてきたなかで、アルファタウリは小さな改良こそ続けているものの、もともとマシンが抱えていたダウンフォース不足や空気抵抗の大きさといった欠点を抜本的に改善するようなアップデートを投入できていない。

 シーズン序盤は、角田のドライビングとレース戦略でなんとかマシンの全力を出しきって入賞圏を争っていた。だが、完璧な仕事をしたとしても入賞圏は遠くなりつつある。そんななかで、角田もチームも空回りしてしまっている。

 シーズン折り返しの夏休みまでの残り3戦は、あっという間に終わってしまう。足もとが浮わついたこの状態のままでは、同じような失敗を繰り返すことにもなりかねない。

 今週末のイギリスGPにはアルファタウリもアップデートを持ち込むが、それをきちんと機能させることはもちろんのこと、まずは「実力を最大限に出しきる」という当たり前のことが当たり前にできるよう、一度原点に立ち返って自分たちのやるべきことを見詰め直す必要がある。

 オーストリアGPの絶望的な週末は、そんな現実を突きつけられたような気がしてならない。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

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