F1勢力図2023を開幕3戦から分析「レッドブル23戦全勝の恐れ」「フェラーリは速さが足りない」「アルファタウリは最下位マシン」 (2ページ目)
【レッドブルに弱点はない?】
とはいっても、ICE(内燃機関エンジン)とターボが発するパワーは、4メーカー間でほとんど差がない。5kW程度の僅差にあると言われており、加速や最高速に大きな差を生み出すわけではない。それは、同じパワーユニットを搭載するレッドブルとアルファタウリの速度差を見れば一目瞭然だろう。
しかしERS(エネルギー回生システム)の分野では、ライバルに対してアドバンテージを誇っている。
バーレーンやサウジアラビアなど全開率が高いサーキットでは、ライバルが長いストレートエンドでエネルギー切れを起こしていたのに対し、ホンダ勢はそれが一切なかった。それだけ多くのエネルギーをMGU-H(ターボ熱回生)から回収し、高効率バッテリーでロスなくアシストパワーに回生しているというわけだ。
そして今季の特徴のひとつが、予選と決勝のペース差だ。
レッドブルとライバル勢との差は、予選では0.2〜0.4秒程度。しかし、これが決勝では1秒程度まで広がる。普通は予選のピークパフォーマンスは差が大きくなり、各車がペースを抑えて走る決勝では差が縮まるのが通例だ。だが、今季のレッドブルは決勝ペースが非常に速い。
これはレッドブルが予選よりも決勝にかなり比重を置いたセットアップを採っていることが理由になっている。昨年の対フェラーリの戦いにも見えた戦法だが、今年はレースペースの優位性がさらに大きくなっている印象がある。
つまり総合すれば、RB19はストレート偏重型だった昨年型に比べてオールラウンドに高い性能を発揮するマシンであり、弱点が見当たらないと言っても過言ではない完成度を誇っている。これが、ライバルたちが「23戦全勝」を恐れる理由だ。
しかし、レッドブルに弱点がないわけではない。
昨年はレッドブルだけがストレート重視のマシンコンセプトを採り、圧倒的な最高速を誇っていた。だが、今季はライバルたちも同様のコンセプトにシフトしてきている。
そのため、最高速の優位はまだあるとはいえ、かなり小さくなった。昨年は10km/h以上あった差が、バーレーンやオーストラリアなどリアタイヤを守るためにリアのダウンフォースが必要なサーキットでは、2~3km/h程度にまで縮まっている。
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