MotoGPシーズン総括。撤退で考えるスズキ経営陣の「文化」への姿勢と来季日本メーカーの正念場 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • photo by Nishimura Akira, MotoGP.com

スズキは最終戦でトップを独走できる実力を見せつけたスズキは最終戦でトップを独走できる実力を見せつけたこの記事に関連する写真を見る ところで、佐原の上記の言葉にあるとおり、最終戦のバレンシアGPではヤマハのクアルタラロとドゥカティのバニャイアがチャンピオンを争っていた。シーズン最終戦までもつれ込んだとはいえ、23ポイントをリードするバニャイアは、たとえクアルタラロが優勝した場合でも、自分は14位でゴールすれば王座を確定できる、という圧倒的に有利な状況だった。

 前年度チャンピオンのクアルタラロはシーズン序盤に快調な滑り出しを見せたものの、初夏の中盤戦以降は苦労するレースが続き、対照的にバニャイアは4連勝をはじめとする快進撃でどんどんライバルを追い上げ追いつめていった。ドゥカティはMotoGP参戦24台中8台、と全体の1/3を占める最大勢力だが、バニャイア以外にも毎戦ドゥカティ勢の誰かが表彰台に登壇している。

 一方、パワー面で非力なヤマハの性能を最大限に発揮しようと渾身の走りを続けたクアルタラロは、無理がたたって転倒する等のノーポイントレースもあり、流れを見失っていった。そして、シーズン終盤ではついにランキング首位の座を明け渡し、バニャイアを追う立場になった。このあたりの推移にも、今シーズンの両選手、そしてヤマハとドゥカティの勢いの差が如実に表れている。

 結果はこのシーズン展開に表れているとおり、バニャイアがタイトルを獲得。チームチャンピオンシップとマニュファクチュアラーズタイトルも制して、ドゥカティは2007年以来15年ぶりの三冠を達成した。しかも今年は、イタリアのチームに所属するイタリアのライダーがイタリアのバイクで世界チャンピオンになる、という、イタリアにとってはまさに悲願の達成である。

 さらに、このMotoGP最終戦翌週に行なわれたスーパーバイク世界選手権(SBK)第11戦インドネシア大会でも、ドゥカティはライダー・チーム・マニュファクチュアラーの三冠を達成。ドゥカティはプロトタイプマシンと量産車のふたつの世界最高峰カテゴリでパーフェクトウィンを成し遂げ、2022年の二輪ロードレース界を文字どおり制覇した。

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