「初めて目撃するシーンが何度もあった」F1フォトグラファーふたりが「今季レースが一番面白い」と断言 (4ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi

熱田 久しぶりに誕生した日本人ドライバーということで周りが高い期待を持っていましたが、実際にシーズンが始まってみたら、F1のハードルは高くてそう簡単にはいかないというのが前半戦を終わってはっきりしたわけですよね。冷静に考えると、テスト日数は少ないし、レースウィークの練習走行の時間だって昨年よりも1時間短くなっています。今までの日本人ドライバーと比べて、走行時間が圧倒的に少ないんです。そんななかでF1マシンに慣れるのは大変なことで、やっぱり時間が必要です。あのシャルル・ルクレール(フェラーリ)だってデビューシーズン前半戦はかなり苦労しましたし、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)も目立った活躍はできませんでした。

桜井 角田選手に対する海外メディアの評価は、序盤戦のアルファタウリがマシン的にも調子がよかったですし、何度か入賞しているので、普通に「いいドライバーだね」という感じです。でも視覚的にすごいなと感じたシーンは正直言ってまだないですね。たとえば、小林可夢偉選手はデビュー戦の2009年ブラジルGPで当時チャンピオンシップをリードしていたジェンソン・バトンと激しいバトルを繰り広げて、海外のフォトグラファーたちからも「すごい日本人ドライバーが登場したな」と声をかけられました。でも角田選手はまだクラッシュの印象が強いので、後半戦は学習能力を発揮してほしいと思いますね。

熱田 今はテレメトリーのデータを見ると、ドライビングが全部わかってしまうわけじゃないですか。たとえば、チームメイトのピエール・ガスリーが「こんなところまでブレーキを踏まないんだ」「ここではこれだけアクセルを踏んでいる」とかね。同じクルマに乗っているんだから、じゃあ自分もいけるだろうとトライしたらドーンといっちゃった。おかしいなって思っているのが角田選手の現状だと思います。結局、自分の思うようなクルマになっていないんでしょう。それが中盤戦になっても改善せず、焦りが生じているんだと思います。

桜井 あとSNSがあるので、ファンからの期待や評価がわかってしまうこともあると思います。日本のファンからすごい走りを期待されているのでやんなきゃなっていう焦りがあるはず。とにかく今は周囲の雑音を気にせず、角田選手には自分の走りをしてほしい。

熱田 アルファタウリのフランツ・トスト代表は「新人ドライバーが複雑な現代のF1を理解するには3年は必要」と言っていますが、そのとおりだと思います。経験を積んでドライビングの引き出しが増えていけば、そのうちガーンといきますよ。それまで、もう少し待ってほしいですね。

(後編につづく)

【profile】 
熱田 護 あつた・まもる 
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦した後、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。自身の誕生日の9月28日に、ラストイヤーを迎えたホンダF1の戦いをまとめた2022年カレンダー『Honda Last Battle』(インプレス刊)を発売する。

桜井淳雄 さくらい・あつお 
1968年、三重県津市生まれ。1991年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材し、F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。新型コロナの影響で昨シーズンの現場での取材を断念したが、今季からは再開。現在、鈴鹿サーキットの公式サイトで特別企画「写真で振り返る2021年シーズン」を連載中。

◆集英社ムック
『Sportiva TOKYO 2020 オリンピック 総集編』好評発売中!

発売日:8月23日
定価:1760円(本体1600円)

【内容】

●Medal獲得数は58個!
日本人メダリストを紹介

●ニッポン野球の底力!
侍ジャパン、歓喜の金

●サッカー U-24日本代表
本気で金メダルを狙った男たち
「史上最強」ゆえの涙

●前代未聞のオリンピックが開幕するまで
険しすぎた道のり

以上のほか、必読の特集が満載。永久保存版の1冊‼

購入はこちらから

‣Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4081023336

‣セブンネット
https://7net.omni7.jp/detail/1107224540

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る