「5m先も見えない」F1ベルギーGP。わずか3周で終了の判断は正しかったか (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

「もちろんこういうかたちでの勝利は望んでいなかったし、きちんとしたレースができなかったのはとても残念だよ。でも、今日のコンディションではとてもトリッキーだった。レースでは大きな事故が起きるようなリスクは冒したくないし、あの状況でレースをするのは正しいことではなかったと思う。

 ファンのみんなは納得できないかもしれないけど、やはり安全性のことも考えなければならないからね。この寒さと風と雨のなかで遅くまで残って待っていてくれたファンのみんなには本当に感謝しているし、彼らこそが今日の勝者だよ」

 レッドブルとしては雨の予選・決勝にはダウンフォース増大が有利と読んで、メルセデスAMGよりもコーナー重視の空力パッケージを選択した。これが予選で効果を発揮して、ポールポジションを獲得。そして、レースができなかった決勝での優勝12.5ポイントにつながった。

 ウイリアムズのラッセルも同様の戦略が当たり、雨のなかで勇敢かつ驚異的に繊細なドライビングでオールージュやプーオンなどの高速コーナーを誰よりも速く走り、マシンの性能をはるかに上回る2番グリッドを獲得してみせた。

 その一方でメルセデスAMGはレースでの競争力を優先し、ダウンフォースを削って最高速を伸ばしたセットアップがウエットコンディションで不利に働いた。レース週末全体を見渡せば、戦略ミスだったと言わざるを得ないだろう。

 イギリスGP、ハンガリーGPと「レッドブル対メルセデスAMG」の真っ向勝負は繰り広げられず、真の勢力図が不透明なままで迎えたシーズン後半戦だったが、ここでもその明確な答えは見えないまま終わってしまった。

「予選もウエットでしたし、トリッキーな状況だったので、(実力については)なんとも言えない部分がありますが、そんななかでもきちんとポールポジションを獲ったことによって今日のレースのルールのなかで最善の結果につなげることができたという意味では、よかったと思います。この先もいろんなことがあるかとは思いますが、最善を尽くす。それしかないと思っています」(ホンダ・田辺豊治テクニカルディレクター)

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