「5m先も見えない」F1ベルギーGP。わずか3周で終了の判断は正しかったか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 雨雲レーダー上は常にサーキット上空に雨雲が襲来しており、早期のコンディション改善が見込めるような状況ではなかった。しかし、サーキット南側では雲の切れ目もあり、本来のスパウェザーならば刻々と天候が変わって、その切れ目の間にレースを開始できる可能性もあった。

 興行としては、セーフティカー先導であろうとスタートを切って2周走行すればレースは成立となり、F1もFIAもチームも主催者(サーキット)も、誰も損をしない状況になる。しかし、観戦に訪れたファンは失意のなかでサーキットをあとにすることになってしまう。

 だからこそF1側としても、本来は開始予定時刻の15時から3時間で強制終了となるカウントダウンを残り1時間で止めてまで、レースをスタートできる可能性があるかぎりはぎりぎりまで待つ、という選択をした。せめて1時間だけでも、レースを届けようとしたわけだ。

 メディカルカーによる何度かの確認走行のあと、18時17分になってようやくレースはスタートが切られることとなった。

 セーフティカー先導で各車がコースへと出て行って1周目が始まるが、ドライバーたちからは依然として視界がほとんどないという報告がもたらされ、3周を走行して「レース成立要件」を満たしたところで再び赤旗。そして18時44分にレース終了の通達。周囲はすでに暗くなり始めており、日没までの残り時間を逆算するとデッドラインを迎えてしまったのだ。

 これにより、フェルスタッペンの優勝が決まり、2位には雨の予選で驚異的な走りを見せたジョージ・ラッセルがウイリアムズに表彰台をもたらし、ルイス・ハミルトンが3位という結果になり、レース距離の75%を走破していなかったためハーフポイントが与えられることとなった。

 フェルスタッペンは4時間近くにわたって待ち続けたファンを気遣いながらも、安全が確保できない状況下では致し方のない判断だったと、レースコントロールの決定を支持した。

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