ホンダは歓喜、トヨタは悪夢。スーパーGT、最終戦の大どんでん返し (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 もちろん、37号車の平川も100号車の接近には気づいており、意地の走りを披露。そのまま最終ラップに突入し、37号車が先頭で最終コーナーを立ち上がった。

 その瞬間、37号車にまさかの展開が待ち受ける。突如マシンが失速し、ゴールまでわずか500メートル足らずというところでガス欠となってしまったのだ。100号車はその横をすり抜け、トップでチェッカーフラッグ。最後の最後で奇跡の大逆転となり、年間チャンピオンの座を獲得した。

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 勝利を確信していた37号車陣営は、全員がまさに茫然自失。ニック・キャシディの代役を務めた山下は、目の前で起きたことが理解できないような目で、ずっとモニターを見つめていた。そして、ゴール直前で年間王者の座が手からこぼれ落ちた平川は、メインストレート脇にマシンを止め、ひたすら悔し涙を流した。

「正直、燃料のことはあまり心配していなかったので、残り10周でスパートをかけました。あのギャップのままでゴールできたはずだったんですが......そうなりませんでした。私も長い間レースをやっていますけど......『レースってこんなものだよ』とは今の段階では済ませられないです。ちょっと、なんと言っていいか......言葉にするのが難しいです」(37号車・山田淳監督)

 その一方で100号車のピットは、誰もが予想していなかった結末によって歓喜に包まれた。

 実は、チームのメインスポンサーを長年務めてきたレイブリックが来年3月でブランドを終了することがレースウィーク前に発表されていた。それに伴い、多くのスーパーGTファンに親しまれてきたレイブリックカラーのマシンがレースをするのも、これが最後だった。ラストランという花道を飾るにふさわしすぎる結末となり、サーキットは大きな感動に包まれた。

 自身初のGT500優勝となった牧野は、人目をはばからず号泣した。

「(山本)尚貴さんに交代した時も、37号車とは15秒くらい差がありました。後半、僕は見守ることしかできなかったんですけど......正直想像していなかった結末だったので、チェッカーが出た時は自分がどういう感情なのかよく分からない状態でした。チャンピオンを獲れて本当によかった」(牧野)

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