新世代が台頭するMotoGP。抜け出すヤマハを安定度増したスズキが追う (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 一方、リンスは5列目13番グリッドからのスタートを強いられた。しかし、レース後半にはミル以上の猛烈な追い上げを見せて3位のチェッカーを受けている。ミルと同様に終盤周回になっても1分41秒台を維持し、最後の2周でようやく42秒に落とした。この両選手のレース内容からわかるのは、20年のスズキGSX-RRが非常に安定した性能のマシンであることだ。

 チームの技術監督・河内健は、「自分たちの持ち味であるまとまりのよさを崩さないようにしながら、少しずつパワーを向上させていく」ことを常にエンジンの開発課題として挙げている。また、車体に関しては、取り回しの軽快さやほどよい剛性バランスに以前から定評がある。その地道な積み重ねが少しずつ成果を見せ、今シーズンの結果が示すように満遍ないまとまりとして仕上がっているのだろう。

 タイムの安定感とそれに伴うレース終盤の強さ、という特徴もさることながら、強豪陣営がいずれもサーキットの特性次第で大きく成績を浮沈させるのに対して、スズキの場合はどこにいってもそれなりに安定して高いリザルトを残せていることが何よりも今年の彼らの強さに繋がっている。

 ここ5戦で4回の表彰台を獲得しているミルの成績に、それが如実に表れている。リンスの場合、今回の3位は昨年8月のイギリスGPで優勝したとき以来の表彰台だが、シーズン序盤に肩の脱臼をしていなければ、今年はもっと高い成績を収めていたことだろう。

 ミルとリンスというヤングライダー2人のチーム体制になった19年に、チームスズキエクスターのマネージャー、ダビデ・ブリビオは「トップライダーを獲得できないのなら、我々は自分たちの手でそれを作り上げる」と述べた。彼からその話を聞いた当初はやや遠大な野望にも見えたが、そんなブリビオの計画は、いま、確実に現実化しつつあるといっていいだろう。

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