フェルスタッペンの心に火を点けた、メカニックの努力とホンダの心意気 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy


 RB16自体の素性は悪くない。だが、限界点での最大ダウンフォース量が安定しないことが問題なのだ。

 どれだけ最大ダウンフォース量が優れていても、コーナリング中に一瞬でもそれが大きく抜けるのであれば、ドライバーはマシンを信頼してコーナリングすることはできない。抜ける瞬間がいつ来るのかわかっていれば対処もできるが、それがわからないから、抜けた際には大きくタイムロスをする。

 それが嫌なら、マージンを残して走らざるを得ない。決勝では後者だから、安定したタイムを刻むことができる。

 ホーナー代表はRB16が抱える問題をこう語る。

「おそらく、空力的に何かが正しく機能していないと思う。まずはそれを理解し、修正しなければならない。ある状況下では想定どおりの挙動を示してくれるし、マシンの基礎的な部分はしっかりしている。すばらしいマシンであることはわかっているんだ。

 ただ問題は、我々のシミュレーションツールが予測したとおりの挙動を(実走状態で)マシンが見せてくれないことだ。その原因を究明しなければならない」

 空力パッケージそのものの問題であるということは、原因の究明に次いで対策パーツの設計製造も必要になる。つまり、一朝一夕に改善することは難しい、ということでもあるのだ。

 これを少しでも補うために、ホンダはハンガリーGP決勝でこれまで以上に攻めた使い方をした。

 ハンガロリンクは全開率が低く、パワーセンシティビティ(出力がラップタイムに与える影響)が低いが、パワーがないよりはあったほうがラップタイムが速くなることは間違いないからだ。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「今日は相対的な戦闘力を上げるためにも、レース状況を見ながらプッシュ気味にパワーユニットを使いました。『パッケージとして対他競争力が弱いよね』という声に対し、ホンダとして何ができるのかを考えてやりました」

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