みんなに愛されたニッキー・ヘイデンが遺したレース愛あふれる言葉 (5ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 誰もヘイデンの陰口をたたかなかった。ヘイデンは本当に、みんなに愛されていた。

 その彼が、2017年5月に交通事故に遭った。

 イタリアで自転車トレーニングの最中に自動車と衝突したという情報は、即座にMotoGP関係者たちの耳にも届いた。この時、MotoGPはフランスGPがまさに始まろうとしていたところだった。ル・マンサーキットのパドックでは、レースウィークを通じて、「ニッキー、早く回復してくれよ」「元気な姿で戻ってくるのを待ってるぞ」というメッセージが、チームやクラスを問わずあちらこちらで掲示された。

 しかし懸命な祈りもむなしく、フランスGP決勝翌日の月曜に、ニコラス・パトリック・ヘイデンの死去が発表された。

 次戦イタリアGPは、不慮の事故により35歳の若さで世を去ったヘイデンを追悼する大会になった。あまりに突然の出来事だったため、誰もがまだ気持ちの整理をつけられないでいた。

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