MotoGPマルケス圧勝の裏で、新世代が台頭しベテランは衰退 (4ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 20歳の誕生日段階で見ると、表彰台はその優勝を含めて計4回、ポールポジションは3回、という実績である(マルケスの場合は、20歳の誕生日段階で26勝、39表彰台、28回のポールポジションを獲得している)。

 しかし、今年のヘレス(第4戦・スペインGP)で、20歳14日というマルケスの記録を更新する若さで最高峰クラス史上最年少ポールポジションを獲得し、そこからすべてが始まった。クアルタラロはその後、5戦のポールポジションと7回の表彰台という成績を挙げ、カタルーニャGP、サンマリノGP、タイGP、日本GP、バレンシアGPでマルケスに肉迫する戦いを見せた。

 彼の正確なライン取りと丁寧な乗り方は、もともとハンドリングに優れ、さらに性能を向上させてきたヤマハの特性と完璧なマッチングを見せている。だが、今も技術研鑽に努めるあのロッシをはじめ、ほかのヤマハ陣営ライダーたちよりもクアルタラロが頭ひとつ飛び抜けているのは、なによりもその卓越したブレーキング能力ゆえだ。

 しかもクアルタラロは、ここ2年ほどの迷走を経てようやく方向性が定まってきた今のヤマハにとって、基準とも言うべき存在になっている。日本GPの際に、チームメイトのフランコ・モルビデッリは「ファビオは、ウチのバイクでもビックリするような走りで速さを発揮できると実証したんだ。だから、それがほかのヤマハライダーたちのモチベーションになっている」と述べていた。

 ちなみに、モルビデッリの言う〈ヤマハライダー〉たちは、3人(ロッシ、ビニャーレス、モルビデッリ)合わせて計11回の世界タイトルと146勝を挙げている。なにか途轍もないことが起こり始めているのかもしれない。

 だが、クアルタラロは最高峰クラスでは、まだ1勝も挙げていない。今季のヤマハで勝利を達成したのは、ビニャーレスだ。2019年のレースで、マルケスを徹底的に引き離して優勝できたのは、彼だけだ。しかもたった一度ではなく、第8戦・オランダGPと第18戦・マレーシアGPの2戦で圧勝を飾っている。

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