MotoGPマルケス圧勝の裏で、新世代が台頭しベテランは衰退 (2ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 二輪ロードレースの最高峰のMotoGPは、ここ数年、息を呑むような超接近戦のバトルになる傾向が高まっている。

 公式タイヤサプライヤーのミシュランが、とくにリアタイヤの品質を向上させたことにより、2019年シーズンはコンパウンドの寿命がさらに延びて、その結果、選手たちは1周目から思いきり飛ばすことができるようになった。2017年や2018年は、何台も入り乱れる優勝争いが何度も見られたが、今年は1対1、多くても三つ巴の戦いになることが多かった。

 マルケスに関しては、バトル上等という過去の戦い方から大きく変わりつつあることも、特筆すべき変化のひとつだ。とくにシーズン序盤のレースでは、序盤から後続を引き離してライバルたちをあきらめさせてしまおう、という狙いが何度もうかがえた。9秒の大差を開いて優勝した第2戦・アルゼンチンGPは、その典型例だ。

 これは過去のマルケスのスタイルからはほど遠く、むしろ「ミック・ドゥーハン・スタイル」と言うべきだろう。第5戦・フランスGPでマルケスは、「ライバルに対して、従来とは違う戦略を採らなきゃならない時もあるんだ」と述べている。

「そうじゃないと、手の内を読まれてしまうからね。あるレースでは序盤から飛ばして、あるレースでは序盤はタイヤを温存しながらペースを抑えてと、その時々で戦略を変えれば、どの手でくるのか向こうは判断できなくなるんだ」

 この戦略は、後続を一方的に引き離す展開になった第4戦・スペインGP、第5戦・フランスGP、第6戦・カタルーニャGP、第9戦・ドイツGP、第14戦・アラゴンGP、第15戦・日本GP、そして第19戦・バレンシアGPで非常にうまく作用した。トップスピードでドゥカティの後塵を拝することに飽き飽きしたHRCは、エンジンの大幅な改善を果たした。その結果、マルケスは「いろんな方法でラップタイムを出す」ことができるようになったのだ。

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