F1日本GPで痛感したフェラーリとメルセデスの「違い」 (4ページ目)

  • 川喜田研●取材・文 text by Kawakita Ken
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 もうひとつ、今回の日本GPで興味深かったのは、メルセデスがふたりのドライバーに採った「レース戦略」だ。スタートでトップに立ったボッタスが17周目、36周目とオーソドックスな2ストップ作戦を選択したのに対し、レース序盤、ベッテルに次ぐ3位につけていたハミルトンは、最初のピットストップを21周目まで引っ張ってから、ミディアムタイヤに交換。31周目にベッテル、36周目にボッタスが2度目のピットストップを行なうとリードを奪い、そのままトップを走り続ける。

「もしかすると、タイヤマネジメントに長けたハミルトンが、このまま1ストップで走り続けるのか?」一瞬、そんな思いが頭をかすめたのは、チームメイトのボッタスも同じだったようで、「ルイスは本当に2度目のピットインするんだよね?」と無線でチームに確認する一幕もあったほどだ。

 結局、ハミルトンは42周目に2度目のピットインを命じられ、3位でコースに復帰することになるのだが、ハミルトン自身は最初のタイヤ交換でハードタイヤを選択し、そのまま1ストップで走りきれば、自分が勝てるチャンスがあったと考えていたようで「チームが最適な戦略を採っていれば1-2フィニッシュも可能だった」と明らかに不機嫌だった。

 たしかに「2台とも2ストップ」という当初の作戦を柔軟に変更し、3位を走るハミルトンを1ストップ作戦に切り替えれば、ハミルトン、ボッタスの1-2フィニッシュとなる可能性はあっただろう。だが、その場合、ボッタスはまたしても「ナンバー2の憂き目」に遭い、スタートでトップに立ち、チームの指示どおりに走りながら、勝利をハミルトンに献上するというコトにもなりかねない。

 時に冷徹な「チームオーダー」を発令し、ライバルに対して2台のマシンを使ったチーム戦を仕掛けることが多いメルセデスだが、その際、「エース」ハミルトンのために犠牲になることが多いボッタスの「やる気」を維持することも、長いシーズンを戦い抜き、チームとして確実にポイントを稼いでいくうえでは重要なポイントとなる。

日頃のチーム戦略が「ハミルトン優先」で動くことが多いからこそ、時には「あえてエースに我慢させる」という選択が採れるあたりも、メルセデスが6年連続コンストラクタ―ズタイトルを獲得できた秘密のひとつなのかもしれない。

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