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F1日本GP直前。旬を迎えた「秋のフェラーリ」を味わい尽くす (2ページ目)

  • 川喜田研●取材・文 text by Kawakita Ken
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 これにより、シーズン前半の「メルセデス1強状態」は崩れ、今やメルセデス、フェラーリ、レッドブルの「3強」の中で、マシンの戦闘力ではフェラーリが最強だと言われている。メルセデスやハミルトンが圧倒的なリードを築いてしまったタイトル争いで挽回するには時すでに遅し...という感じだが、このフェラーリの「変身」によって、今週末の日本GPも含め、後半戦のF1が一気に面白くなってきたのは事実だろう。

 だが、思い返してほしい。そもそも、シーズン開幕前の下馬評では多くのF1関係者が「今年のフェラーリはメルセデスを凌ぐ最速マシン。チャンピオン候補の筆頭だ」と予想していたのではなかったか? そんな開幕前の期待を、シーズン前半の躓きという「ネガティブな驚き」で思いきり裏切り「メルセデスのライバルはフェラーリよりレッドブル・ホンダかも......」と周囲が思い始めたタイミングで、今度はいきなり「驚きの速さと強さ」を発揮するフェラーリの、なんと人騒がせでドラマチックなことか。

 もちろん、その背景には「もともとポテンシャルの高かったマシン」の存在と、フェラーリがシーズン後半に向けて「潜在的な性能を引き出すための空力アップデートやセッティングの方向性」を見出したという理由と、チームの地道な努力があるのは間違いない。

 とはいえ、ティフォッシの心を振り回し「思いっきり期待させて裏切りながら、あきらめかけると、また期待を刺激する」という、フェラーリの「悪女」っぷりは強烈で、そのギャップも含めて「Mっ気半分」で楽しむのが「大人のファン」の嗜み。その点、期待値が大きく上向いているシーズン後半のフェラーリは、この先に待つ不安要因も含め、ここ数年で最高の状態にあると言っていい。

 一方、こうして「F1最強」のマシンを得たフェラーリの魅力をさらに倍増させてくれるのが、前述のとおり、フェラーリのもうひとつの側面。すなわち「ちょっとヌケけてて、かなりモメそう...」という「不安要因」だ。

 単に速くて強いのが魅力なら誰にでもわかるだろうが、大人のファンはちょっと違う。ようやく最強のマシンを得たにも関わらず、ティフォッシたちの気をもませる「失敗」や「内紛」の不安が絶えないことが、実はフェラーリの魅力を味わい尽くすための、絶妙なスパイスなのである。

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