MotoGPファクトリーチームが揉めている。火種になったライダーの未来は
結果論ではあるが、KTMがファクトリー契約選手のヨハン・ザルコを走らせない決定をしたことは、アラゴンで大きな裏目に出てしまった。
土曜のFP4で転倒したポル・エスパルガロは決勝を欠場し、ザルコの代役として今季シーズン終了までの6戦に参戦することになったミカ・カリオは実戦から15カ月遠ざかっていたため、速さを取り戻すのに時間がかかる状態だった。両選手とも上位陣に迫ることなくレースを終え、チャンピオンシップポイントも獲得できずにアラゴンを去ることになってしまった。
苦境に立たされているヨハン・ザルコ だが、第14戦・アラゴンGPのレースウィークにKTMファクトリー関係者の話を聞いてみたところ、おしなべて皆が、ピットボックスの雰囲気はザルコ時代と明らかに異なっていた、と述べていた。
ザルコがいた頃はやけに静かで、楽しい雰囲気もなく、緊張感がふくらむ一方だったが、カリオの加入により新鮮さが吹き込まれ、作業にもある程度の快活さが戻ってきたのだとか。あるKTMの関係者によると、今もザルコの味方をしているスタッフでさえ、ピットの雰囲気がよくなったと話しているという。
オーストリアのKTMファクトリーが「シーズン残り6戦はザルコへの役務提供を見合わせると決定した」と明らかにした、アラゴンGP直前の火曜のニュースは大きなショックをもたらした(訳註:ザルコとKTMは2019年からの2年契約を締結していたが、成績不振を理由とするザルコ側の申し出により年内で契約を打ち切るという発表を、KTMは第11戦・オーストリアGP終了直後に行なった。ただし、その際の発表では、年内は最後までレースに参加すると明言されていた)。
とはいえ、今から振り返れば、それを暗示するような出来事がいくつもあったことも事実だ。
バイクに対するコメントは常に否定的で、ヘレス(第4戦・スペインGP)ではフリープラクティスで転倒した際に、感情的な言葉で難詰する姿が実況放送に捉えられた。アッセン(第8戦・オランダGP)の決勝レースをリタイアした時は、腕上がり(前腕の極度の筋肉疲労による握力低下)が理由とのことだったが、これに対してKTMスポーツディレクターのピット・ベイラーは、「我々チームに対するもっとも嫌な出来事」と述べていた。
1 / 6