2019.09.13

室屋義秀が明かすエアレース最終戦の裏側。
次の行き先は「見えている」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 そして、室屋は小さくうなずきながら、にっこりと笑って言った。

「やっぱり、チームを信じて飛んだのが正解でした。ラウンド・オブ・8でも、フランソワ(・ルボット)にペナルティがあったので、結果的に大差がつきましたけど、ペナルティなしのタイムでもギリギリ勝っていた。そこはラインの差だったと思います」

千葉でのレース後、チーム・ファルケンのスタッフたちに囲まれ笑顔の室屋 photo by Joerg Mitter / Red Bull Content Pool 抜群のチームワークで手にした会心の勝利。だが、室屋に多くの勝利をもたらしたチーム・ファルケンも、これにて解散、である。

「みんな高いスキルを持っているので、それぞれの活動に戻りますけど、また何か別のプロジェクトがあれば、一緒にやろうぜって話しています」

 10年前には、およそメジャーとは言い難かったエアレースという競技の知名度を飛躍的に高め、自身も年間総合優勝を獲得。モータースポーツの世界に強烈なインパクトを残しつつ、エアレースパイロットとしての役目を終える室屋には、これから先、どんな未来が待っているのだろうか。

「未来が見えないと、不安に襲われると思うんですけど、少なくとも自分のなかでは、結構行き先が見えている。今まではレッドブル・エアレースのワールドチャンピオンだけを見据えてやってきたわけですけど、逆にこれからは選択肢が広がるというか、時間にも多少余裕ができるし、いろんなチャレンジができると思っています。だから、楽しみですよね。人とのつながりが増えて、ネットワークもできて、10年前の自分だったら無理だったことでも、今はやれる可能性がずっと高くなっていると思うから」

 持てるもののすべてをかけ、頂点を目指す戦いは終わりを告げた。だが、そこに不思議と湿った空気はなく、からりと乾いた決意が漂うだけだ。

「シワは増えたし、頭は薄くなったし」

 デビュー当時の映像を見ながら自虐的に笑う、46歳の元・エアレースパイロットは、楽しげだった。

 ただし――。個人的に言わせてもらえば、近い将来、もう一度、”エアレースパイロット室屋義秀”と話をする日が来ることを期待している。たとえ室屋がどう考え、どんなコメントを出そうとも、その気持ちに変わりはない。

関連記事