2019.09.04

室屋義秀はエアレース最終戦で
「もう一度味わいたい感覚」がある

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 それは突然の報せだった。

 レッドブル・エアレース、2019年シーズン限りで終了へ――。

 パイロットをはじめとする各チームのスタッフ、さらにはレース運営の中枢スタッフですら青天の霹靂だったというその一報は、当然のごとくメディアやファンを驚かせた。

 しかも、レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップが今季で終了してしまうばかりか、今季のレースも当初予定の8戦から4戦へと半減。9月7日、8日に千葉・幕張海浜公園で行なわれるレースが今季の、そしてレッドブル・エアレースの最終戦になるという事実が、衝撃をさらに大きなものにした。

 当初、メディアやファンの間に惜しむ声は多かった。だが、それも徐々に、(あきらめに似た反応も含めて)事態を冷静に受け止めようという空気に変わってきている。

 何より、当事者中の当事者とも言うべき室屋義秀は、感情的になることなく冷静な対応に終始してきた。

エアレース最終戦で逆転の総合優勝を狙う室屋  photo by Andreas Langreiter / Red Bull Content Pool レッドブル・エアレースは新興のモータースポーツながら、2003年の創設以来17年、2005年に国際航空連盟公認の世界選手権となってからでも、15年の歴史を持つ。決して昨日今日始まった場当たり的なイベントではない。

 まして操縦技術世界一を目標に、長年パイロット生活を続けてきた室屋にとっては、初めて世界一の称号を手にしたのが、このレッドブル・エアレースなのである。相応の思い入れがあって不思議はない。

 ところが、だ。終了発表の直後に、室屋がSNSを通じて出したコメントは、「(今季は)9月までの短期決戦となったので、他のことは考えず100%レースに集中していく」だった。

 また、千葉戦をおよそ2週間後に控えた記者会見でも、「コンペティションのひとつが終わるのは残念だが、今は最終戦の千葉に向けて日々できることは限られているので、先のことを考える余裕はない」。

 つまり、寂しいとか、驚いたとか、レッドブル・エアレースの終了を惜しむ言葉をほとんど発していないのである。

 しかも、レッドブルといえば、2007年から室屋の活動をサポートし、室屋が世界一へと至るきっかけのひとつを作ったスポンサーである。仮にエアレースがこの先、これまでとは違う形(新しい冠スポンサーがつく、レースごとにスポンサーがつくなど)で継続されることがあったとしても、レッドブル・エアレースは今年で終わり。室屋のパイロット人生は、大きな節目を迎えていると言ってもいい。