怪物vs怪物の超絶バトル。0.023秒差でドヴィツィオーゾが開幕制す (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 また、ドヴィツィオーゾは「あんな勝負ができるのはマルクだけ」とも述べて、ライバルの卓越したテクニックと闘争心を評価した。

「あんなコーナー進入をできるのは、マルクしかいない。彼は勝負をしたかったから、あそこであんなふうに攻めてきたんだ。でも他のライダーなら、あの状況だと僕の後ろにいたままだっただろう。彼に対してこういう勝ち方ができたのはいいことだけど、残念ながらマルクはあんな状況を作り出すことのできるライダーなんだ」

〈マルクスタイル〉と呼んだ勝負の駆け引きについては、こんなふうに解説した。

「誰かの後ろにいるときは、ハードなブレーキングで勝負しなければならない。フロントとリアがロックして恐怖を感じるくらいの状態でも、適切に曲がっていかなければならない。あれは僕にはできないね。でも、マルクは何かを持っているんだ。あの状況でも、彼は皆よりうまくやる。たいていの場合、彼がああいう勝負に出るとうまく制してしまうけど、それはこちらも織り込み済みなので、適切に対応した」

 マルケスとの攻防を分析的に説明するドヴィツィオーゾだが、怪物の怪物たる所以(ゆえん)を評価できるのは、彼自身もまた怪物だからにほかならない。

 一方、その超人的な攻防に負けたマルケスはというと、「ここは苦手サーキットで苦労するコースだから、2位で終えることができてとてもハッピーだよ」と、さばさばした表情で述べた。

「とくにこのウィークはフロントタイヤのマネージメントに苦労した。終盤はドビのペースがよかったけど、勝負に出たんだ。負けたけど、いい勝負だった。やるだけのことはやって、20ポイントを獲得できた」

 ドヴィツィオーゾとマルケスが最終ラップの最終コーナーで紙一重の勝負を繰り広げたのは、今回が5回目になる。

 2017年のオーストリアGPは0.176秒差でドヴィツィオーゾの勝利。2カ月後の日本GPは雨の中で同様の展開となり、このときも0.249秒差でドヴィツィオーゾが先んじた。そして3回目が昨年カタールでの開幕戦。4回目の攻防は秋のタイ、ブリラム・サーキットだったが、ここでようやくマルケスがドヴィツィオーゾに一矢報いて0.115秒差で勝負を制した。

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