2輪もジェットも。ホンダF1、2018年体制は全社挙げての総力戦だった (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そんな環境の変化によって、今まで隠れていた有望な猛獣が現れ始めているという。

「面白い猛獣が出てきたんですよ。チーターみたいなのが。『あそこの檻の中にいたからわからなかったけど、お前、めっちゃ脚が速いじゃん!』みたいな。今年、そういうのが出てきたことが、本当によかったことですね」

 その一方で、開発部隊であるHRD Sakuraと、現場部隊のHRD MK(ミルトンキーンズ)とのコミュニケーションも、田辺テクニカルディレクターがメスを入れることで大幅によくなった。

 開発部隊が実際のレース運用を知らずして開発アイテムを押しつけてもダメで、現場部隊も開発部隊に何が必要で何が重要でないのかを正確に伝える必要がある。

「開発メンバーがいっぱいいるなかで、実走現場は縁の下の力持ちというか、開発のアウトプットとしてパワーユニットを持ってきて使うのが仕事なわけで、現場側の責任者はある意味で『御神輿に乗っかっている』ようなものだと思うんですね。でも1年前は、『この御神輿は恐くて乗れないな』『この辺をもうちょっときっちりと担いでもらわないと』という雰囲気がありました」

 そう語る田辺テクニカルディレクターは、HRD Sakuraのトップである浅木とHRD MKのトップである田辺が同じ感覚を共有したうえで、浅木が大まかな方向性を決定し、それに沿ってより詳細なやりとりは各部門の担当者に任せるという方法を採った。

「浅木がHRD Sakura側の大将で、私が現場の責任者という立場ですが、私は細かいことを浅木にあれこれ言うのではなく、肝になるところだけを言って、細かい部分は現場の各担当者から開発側のチーフエンジニアや実働部隊に直接伝えるような形です。全部聞いていたらパンクして回っていきませんから、上手に優先順位をつけて、『これはすぐにやれ』『これは我慢できるよな?』というようにやっています」

 浅木と田辺のエンジニアとしての感覚が同じで、波長が合うというのが重要なポイントだった。

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