エアレース・室屋義秀が振り返る今季。「勝負運をどうつかむかが重要」 (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

――成功体験があったからこそ、"二匹目のどじょう"を狙ってしまった、と。

「昨季はポルト(での第6戦)の後に、ラウジッツ(での第7戦)までの間、スロベニアでずっと調整していたんですが、そのときに操縦技術の研究をするなかで、いろいろな発見があって、どう表現したらいいのかわからないけど......、"抜けた感じ"があったんです。具体的に説明するのは難しいですけど、決してトリッキーなものではなく、非常に安定してレースで使えるテクニックを手に入れたというか。それがあったので、今季も結局最後は勝てるという甘さがあったのかもしれません。

 ただ、どのタイミングで投入するかという問題はあるにしても、操縦技術にしろ、機体のテクノロジーにしろ、常に研究し続けるのは絶対に必要なこと。体操の選手がD難度、E難度と、常に新しい技を開発するのと同じで、それをしないと、これだけ実力が接近しているタイトなレースで勝ち続けるのは、不可能に近いことだと思います」

最終戦で手応えを掴み、新シーズンへ photo by Samo Vidic/Red Bull Content Pool最終戦で手応えを掴み、新シーズンへ photo by Samo Vidic/Red Bull Content Pool――来季へ向けて、すでに今季最終戦を前に、エンジンを入れ替えたそうですね。

「正直、この最終戦は今季の締めくくりという以上に、来季への第一歩という意味合いが強かった。シーズン途中のタイミングでオーバーホールされたエンジンに換装したのも、完全に来季用です」

――2009年のデビュー以来、今季はチャンピオンとして臨んだ初めてのシーズンでした。振り返ってみて、一番プレッシャーが大きいシーズンでしたか。

「いや、僕自身はそうでもなかったです。自分はそういうことに対してのメンタルトレーニングもして、準備をしているし、その力が十分にあったから、昨季は世界チャンピオンになれたと思うので。そのプレッシャーを感じるようなら、昨季も勝てていなかったと思います。ただ、勝った後の難しさを感じたシーズンではありました。正直、その難しさは言葉で説明するのが難しいし、何を言っても他の人に理解してもらうことはできないと思いますが、レースだけのことではなく、普段の生活も含めて、今季はすごくいい人生勉強になりました」

――まだ公式には日程が発表されていませんが、2019年シーズンのレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは、2月のアビダビからスタートする予定です。あと2カ月半ほどで、あっという間に開幕です。

「新シーズンを迎えるという感慨もなく、このまま次のレースに向かう感じですよね。実際、今季のアブダビからカンヌ(のレース間隔)と大差ないんだから(苦笑)。でも、逆に言えば、この最終戦はラウンド・オブ・8敗退でしたが、最後のフライトはホントにいい手応えだったので、来季の開幕戦はいい形で迎えられる。エンジンを入れ替えた機体は性能のよさが出ているし、スピードも出ているので、安心して来季に臨めるんじゃないかなと思っています」

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