悲願のスーパーGT王座獲得。レジェンド・高橋国光の愛弟子への眼差し (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 あの時の『負け』を経験したことで、自分はさらに強くなることができた。あの時の『小さくならずに思いっきりいけ!』という国さんの言葉があったからこそ、僕もチャレンジする気持ちを忘れずにやってこられて、今のポジションがあるんだと思います」

 山本は2013年と2014年に別チームで走るも、2015年から再びチームクニミツに復帰。今では誰もが頼る「絶対的なエース」として存在感を示している。

「正直、こんなことを言ったら怒られちゃうかもしれませんが(笑)......山本選手が最初、チームに来た時は『純真な子ども』という感じでした。当時は私もいろいろアドバイスというか、自分の経験を話したりしたこともありましたね。

 でも、今はこちらから何も言うことはありません。自分で考えて、自分で動くようになっています。最近は私のほうが勉強になることがたくさんあるくらいです(笑)。彼は今、世界に通用する日本一のドライバーではないかと思います」

 そう語る高橋総監督の眼差しは、まるで子どもが1人前に成長していく姿を暖かく見守る父親のようだった。そして山本も、恩師である高橋総監督への感謝の気持ちを忘れない。

「国さんをはじめ、チームを長年サポートし続けているレイブリックにタイトルをもたらすことができた。ひとつ恩返しができたと思います」(山本)

『ジェンソン・バトンがフル参戦1年目でのチャンピオン獲得』
『山本尚貴の国内最高峰レース二冠達成』
『ホンダ8年ぶりのGT500年間王者』

 今年のスーパーGTの結末は、実に話題が多かった。だが、高橋総監督と山本にとっては、これらの見出しとは少し違う、特別な思いの詰まったチャンピオン獲得だったのではないだろうか。

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