佐藤琢磨がキャリア3度目の優勝。アクシデントを味方にレースを支配 (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 戦況を冷静に見極めながら走ることができるのは、琢磨がインディカーで豊富な経験を積んできたからこそ。ピットとの無線交信で仕入れる情報で、ライバルたちの置かれた状況を把握しながらトップを走行する琢磨は、後続との距離を巧みにコントロールして逆襲の芽を摘み、2017年のインディ500以来となるキャリア3勝目を達成した。

 今季、インディ500優勝チームのアンドレッティ・オートスポートを離れ、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰するという決断は世間を驚かせた。しかし、琢磨はレイホールのチームが持つ将来性を買った。それが正しかったことは、チーム移籍1年目に優勝を記録したことで証明された。

 スタート直後のアクシデントによるイエロー中に短い給油を行ない、その後は39周と75周目にピットストップをして、琢磨は105周のレースを走り切った。ビーチがコースサイドにストップすると、そのタイミングでイエローが出ると予測してピットロードへと滑り込む。これにライバル勢も追従したことで、琢磨は上位にポジションを保つことができた。展開を味方につけ、フルに利用した見事な戦いぶりだった。

 レース終盤はライアン・ハンター‐レイ(アンドレッティ・オートスポート)、セバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング)というベテランの強敵が琢磨の相手となった。燃費をセーブしつつ速く走る。同時にタイヤを労わり、相手との距離にも常に気を配る。完全にレースをコントロール下に置いての堂々たる勝利だった。

「ライアンが速いこと、彼がゴール前にアタックしてくることはわかっていた。しかし、彼をドラフティングの効く距離に入れないようにしていた。それだけの距離があれば、相手は燃費セーブが難しくなるから」と、琢磨は説明した。残り3周でアタックを始めたハンター‐レイだったが、琢磨は付け入る隙を与えずに、0.6084秒差をもって優勝のチェッカーフラッグを受けた。

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