F1シーズン後半戦展望。「フェラーリらしくない」が王座奪還のカギ (2ページ目)
レッドブルRB14はストレートが遅いが、250km/hあたりまでの中低速・中高速コーナーが圧倒的に速い。そして、ダウンフォースを削らなければならないがゆえに、高速コーナーは速くない。
メルセデスAMG F1 W09はストレート、低速、高速コーナーがバランスよく速い。オーストリアGPで空力パッケージを大きくアップデートしてからは、さらにその完成度が高まった。
それでも、マシン特性は違えども各マシンのトータル性能差が小さいため、サーキット特性によって毎戦のように最速が入れ替わる混戦状況を生んだ。また、マシン性能差が小さいからこそ、接触やクラッシュといったアクシデントも多くなった。
そこに「天変地異」が加わったことで、今年のシーズン前半戦は波乱に満ちたエキサイティングなものになったというわけだ。その傾向は後半戦も続くだろう。
パワーユニットでフェラーリがメルセデスAMGに追いつき、追い越したというのが、シーズン前半戦の大きな出来事のひとつだった。
テストが厳しく制限され、実戦で使用するコンポーネントは封印がされて、分解検査や火入れができない現状では、アグレッシブな開発は容易ではない。だが、フェラーリは入念なベンチテストと今季1基目の使用後分解分析によって、ノッキングが多発するほど点火時期を早めて出力を上げる「予選スペシャルモード」を進化させてきた。
また、ERS(エネルギー回生システム)面でも特殊な制御を行なっている。バッテリーをふたつに分けてMGU-H(※)からの充電とMGU-K(※)への放電を同時に行なうことができるという噂は眉唾(まゆつば)ものとしても、ライバルよりもディプロイメント(エネルギー回生)が切れる時間が短いことは確かだ。
※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。
※MGU-K=Motor Generator Unit-Kineticの略。運動エネルギーを回生する装置。
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